隣の芝生は青すぎる『リトル・チルドレン』

　ケイト・ブランシェット主演作品『TAR/ター』で高評価を得たトッド・フィールド監督。彼の過去作品で、興味深い作品を発見しました。ケイト・ウィンスレットやパトリック・ウィルソンなど豪華俳優陣が集結した『リトル・チルドレン』。ほっこり系ヒューマンドラマかと思いきや、"小さなこども"のような欲望を持った大人たちを描いています。

　舞台は平穏な中流上層階級のコミュニティがある郊外の住宅地。専業主婦のサラ（ケイト・ウィンスレット）は、公園で一人娘を遊ばせるものの、周りのママ友たちと馴染めずにいました。そこへ、ママ友たちが"プロム・キング"と呼ぶイケメンの主夫ブラッド（パトリック・ウィルソン）が幼い息子とやってきます。ママ友たちから「彼の電話番号をゲットしたら５ドル」あげると言われたサラはブラッドと会話することに。そこでサラとブラッドは、ママ友たちを驚かせるためにハグとキスをします。そこから不倫関係となってしまった2人。一方、性的犯罪者である中年男性ロニー（ジャッキー・アール・ヘイリー）がこの地域に戻ってくるというニュースが町中に流れ始めます。元警官のラリー（ノア・エメリッヒ）は、執拗にロニーの家族に嫌がらせをして......。

　この物語は、サラとブラッドの関係をメインに、キャラクターたちの人生が複数描かれており、最後には複雑に交差していきます。はっきりしないエンディングで、見るものを「もやもや」とさせてしまう作品ではありますが、人間の複雑さをしっかりと描いた一本。

また、サラは大きな家に住んでおり、主婦をしながらも「典型的な主婦像に当てはまりたくない」という気持ちが強いキャラクター。一方ブラッドは、美人な奥さんとの関係は良好で、幸せな家庭を持っているところが描かれています。一見、何不自由ない生活をしている人たちが、平凡な生活を変えたいが故に「刺激」を求めていく。中流上層階級のコミュニティでそれが起きるとどうなるのかを描いた一本は、「隣の芝生は青く見えるもの」ということをあらためて実感させられた作品でした。

（文／トキエス）