家に帰らせてくれ！『大災難P.T.A.』

やっとの思いで間に合った終電。それが、悪天候に見舞われ運転見合わせ。このタイミングで!?という悲惨な目に、もしかしたら遭ったことがあるかもしれない。乗り換える電車はない、タクシーに乗るにも大行列......そのうえ翌日に旅行のプランなんかを立てていたとしたら、いよいよ泣いてしまう。

ジョン・ヒューズ監督の『大災難P.T.A.』では、似たようなことが起きる。広告会社勤務のニールがニューヨーク出張からシカゴの自宅に帰ろうとすると（飛行機で約4時間）悪天候に見舞われ、さらに約4時間西に進んだカンザスに着陸することに。もはやタクシーで帰れるどころの話ではない。天候が回復するまで待つしかないんじゃ......と思うが、ちょうどサンクスギビングシーズンで、妻も子どもふたりもパパの帰りを楽しみに待っている。パパ、できるだけ早く帰るぞ！というわけで、飛行機が飛ばないなか、あの手この手を使って帰ろうとする。しかしトラブルがトラブルを呼び、家に帰れるかがどんどん怪しくなっていく。そんな話である。

ドタバタ劇もおもしろいのだが、醍醐味はなんといってもデル（ジョン・キャンディー）の存在だ。ニールの行く先、行く先に出現し、旅路をともにするつもりではなかったものの、いつしかお供になっている。デルはいいやつだけれどマイペースで、ちょっと鬱陶しい。ストレス大のときにこんな相手とはいたくない......とニールは何度かデルを切り離そうとするが、なぜかいつも引き戻される。そして時間をともにしていくうちに、もうひとつのトラブルとすら思いかけていたデルとの関係が、だんだんと変わってくる。少しありきたりな展開だが、話のテンポにまんまと乗せられて、最後にはちゃっかり目に涙を溜めていた。

（文／鈴木未来）