もやもやレビュー

地味な田舎の女子大生が連続殺人犯になってみた『エラ 続殺人鬼』

エラ 連続殺人鬼 [DVD]
『エラ 連続殺人鬼 [DVD]』
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B級映画を視聴してストレスを感じるのは、チンケな撮影道具でもなく棒と形容するのもはばかられる演技でもなくキャラクターのブレ。行動する動機や設定を忘れたかのように原因不明な行動をする様を見せられるのは「何で?」という困惑と没入感を阻害して楽しめない。その点、本作は冒頭の「何で?」さえ飲み込んでしまえば行動原理が一貫しているため余計な負担を感じることなく視聴できる。まぁ、冒頭の困惑が大き過ぎて飲み込めるのか、という問題は無視するとして。

母親と暮らす地味で冴えない田舎の女子大生であるエラは心理学の授業で「性的な規範を破る」という課題に内心に抱えていた血への執着から連続殺人鬼の分析を選ぶ。そこからストリップクラブのオーナーを殺害し、解放感に浸る。そこから多くの人々を手にかけていく----という内容。

主人公のエラは地味で冴えないという設定なのに最初の殺人からサクサクと雑に殺人を繰り返し、返り血を浴びたまま帰宅することもザラ。母親はその姿を見ても驚くこともなく日常パートが進んでいく。そのためエラがかえって不審に思っていたところ母親から「父親も連続殺人鬼だった」と告白。何なら父親の殺人の手伝いまでしたと言い出す始末。ブレない映画はストレスが少ないと冒頭で書いたけども、一から十まで共感できない動機で話を進められるとそれはそれで辛い。自身の出生を知ったエラはちょっとした遊びに出かけるノリで母親に見送られて殺人に出かけていくんだから「えぇ......」という感想しか出てこない。

ちなみに課題では自身の経験をあっけらかんと発表したことで即通報され逮捕されている。しかし逮捕後も新たな犠牲者が出たことでエラは釈放され、自身の父親が娘を救うために殺人を行ったのだと感謝し父親を探すことを決意して終わる。

徹頭徹尾ユルいノリで殺人を犯していくので葛藤する描写は皆無。そこだけは徹底しているが天真爛漫すぎてホラーな雰囲気はまるでない。血や臓物の描写があってもモノにしか見えないのでグロテスクさはない。ホラーなのにそれはどうなんだ?とは思うが。
とは言え、主人公が何の考えもなく人を殺めていく様は何も考えずに視聴する分にはちょうどいい。「遅れてきた厨二病の子が妄想を現実世界で実行してみた」というテーマだと思えば、これはこれで楽しめるような。ただ、それだけで上映時間が81分は長過ぎるけども......。

(文/畑中雄也)

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