B級映画でもやっていいことと悪いことがある『プロトタイプ・マナ 制御不能』
- 『プロトタイプ・マナ 制御不能(字幕版)』
- ジェームス・B・コックス,バルーク・カウフマン,ジェームス・B・コックス,アダム・シャピロ,ブレイク・ロビンズ,モリー・バーネット,ブライアン・パトリック・ウェイド,ジョシュ・バンデイ
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サメ映画ではジャケットと内容に大きな乖離があったりジャケットに出てくるものが出ないで終わったりということは珍しくないが何の気なしに視聴した映画でそれをやられると可能性を考慮していない分だけダメージを受ける。本作のジャケットに登場する人物は一応出演するけどもメインの人物が皆無というのはいささか酷い。主人公、ハゲの肥満と地味なプログラマーじゃないか。
あとAmazonなどのサイトに掲載されているあらすじと実際の内容も酷く乖離している。あらすじを要約すると革新的な飛躍を遂げるIT企業のチューリー社にサーバー室を制御するMANAが導入された。同時刻に企業テロ集団がサーバー室に侵入し社員を人質に取りMANAをハッキングしようとしたところ、MANAが暴走し社内の全部の電源が落ち扉がロックされてしまった。そこに有毒ガスが噴射されるという不測の事態に陥り人質と協力して脱出を図ろうとするーーという内容。
あらすじを読んだ時、パニックホラーなのかなと思って臨んだらMANAが緑色に光る冷蔵庫のようなビジュアル。冷蔵庫が暴走して人々がパニックに陥るという絵は非常に滑稽で恐怖心を刺激されない。何ならコメディに見えなくもない。それをハッキングしようとして返り討ちに遭うテロリストというのもどうなのか。目の回りに変なペイントしているし。途中であっけなく死ぬし。
その後もMANAはビルシステムを乗っ取りナノマシンをばら撒いて人々をミイラにしてしまう。MANAが暴走するのは理解できるが人をミイラに変えるナノマシンを保管しているIT企業って何だろう?
暴走を続けるMANAは全世界に対してサイバー攻撃を仕掛けるのだが生き残った人質の2人は帰宅して外部にいる同僚へ連絡してビルをDoS攻撃させることでMANAをシャットダウンさせようとするが即座に復旧。最終的には人質がMANAを停止させるという、「最初からそうしろよ!」との感想しか出てこないパワープレイで解決する。そして何故かMANAは爆発。制作陣はAIや人工知能を何だと思っているのだろうか。昔のB級近未来SF映画から何ら進歩していない認識に驚きを隠せない。それなのにAmazonの紹介文には「世の中へ警告を促すメッセージが込められた本作は必見!」と書いているのだから、この紹介文を書いた人間は果たして本作を視聴したのか疑いたくなる。87分きっちりと視聴したけどそんなメッセージは1秒も受け取れなかったのだが。
何と言うか、全編において看板に偽りしかない作品だった。B級映画でもやっていいことと悪いことがあると思う。
(文/畑中雄也)