もやもやレビュー

ホラー感も視聴後の感動も薄い『ダーク・スクール』

ダーク・スクール(字幕版)
『ダーク・スクール(字幕版)』
ロドリゴ・コルテス,マイケル・ゴールドバッハ,クリス・スパーリング,アナソフィア・ロブ,ユマ・サーマン
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 "世間から隔絶された名門寄宿学校で恐ろしい現象に襲われる少女たちの運命を描いたシチュエーションスリラー"といううたい文句に惹かれて視聴したらホラー感も視聴後の感動も薄いという感想しか出てこなかった。ハッピーエンドだからB級映画あるあるの後味の悪さもないので本当に虚無。それでいてつまらないという感想も出てこないのだから1時間半以上の時間をかけて自分は何をしていたのだろうか?という気分になる。

 父親を亡くしてから素行不良続きでついには高校を退学になった主人公のキットは更生のため山奥の寄宿舎学校に入学させられる。そこにはキットと同じような理由で入学した女子生徒たちが集められていた。キットを含めた生徒たちは教師たちの指導の下、文学や絵画、音楽などの才能が開花し......というあらすじだが、無意識で小説を書き始めたり突如数式を地面に書き出したりと、教育とか全然関係なさそう。主人公もピアノの才能が勝手に開花したことを不審がり、寄宿舎の謎を調べていく。その中で自分たちが夭折した音楽家や作家らの才能を憑依させる依り代にされているのだと知る。

 サスペンスっぽい雰囲気になったと思ったら、怪しげな校長や着飾った連中がピアノの演奏に合わせて踊り出すし唐突に化け物みたいな男が脅かしてくるし(しかし無害)、「自分は何を見せられているのだろう?」と考えてしまう。

 次のシーンでは主人公が音楽室にいて事実を知って絶望から自殺したり憑依した才能に魅入られたりと、混乱している様子。視聴者もシーンのつなぎ目が分からず困惑しかない。
 ここで主人公は校長を問い詰めると、校長には霊と交信する能力があり生徒たちに降霊させ新たな作品を作っていると告白。そこに悪霊に取りつかれた同級生が暴れまわった挙句、燭台の火を倒して部屋は炎に包まれる。ちなみに主人公が即座にビンタして悪霊をはらうので絶望感も何もない。終盤は延々とだらだら続くので本当に勘弁して欲しい。主人公は最終的に父親の霊に導かれて無事脱出する。

 ホラー要素が終盤に向かうにつれどんどんバカげたものになり張ったと思しき伏線は回収されずカタルシスもない。主演は『チャーリーとチョコレート工場』のアナソフィア・ロブで教師役は『キル・ビル』のユマ・サーマンと有名どころが出演しているのでそれを見るためだけに視聴するなら耐えられるかも知れない。

(文/畑中雄也)

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