もやもやレビュー

幸せな日常の過ごし方を教えてくれる『本日公休』

『本日公休』 9月20日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

大阪アジアン映画祭で鑑賞できず気になっていた作品がようやく劇場公開されることになった。主人公のアールイ役には、1999年以来、映画の出演から遠ざかっていた『客途秋恨』(アン・ホ イ監督/90)の名優ルー・シャオフェンが24年ぶりに銀幕に主演復帰。「こんな脚本をずっと待っていた」と出演を即決したシャオフェンは、約4か月間ヘアカットの猛特訓を積んで撮影に臨んだ。本物の理髪師さながらのハサミ捌きと、ブランクを感じさせない演技で、台北電影奨主演女優賞、大阪アジアン映画祭薬師真珠賞(俳優賞)を受賞。期待値が上がる中の鑑賞だったがこれは観れて本当に良かった。

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本作、なんの変哲もない昔ながらの理髪店で女手1つで3人の子供達を育て上げた店主のアールイが主人公。大きな事件もド派手なカーチェイスも起こらない。ただチョキチョキと髪を切り1つ1つ丁寧に仕事をしているアールイの姿がある。
離れた街から通っていた常連客が病で床に伏していると聞いたアールイは『本日公休』の札をだして最後の散髪へ出向く。

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この物語の素晴らしいところは、誰にでもある日常だけれど主人公が出会った1人1人との時間をとても丁寧に大切に過ごしていること。
同じ時間を生きているとしたら人生の濃度が濃くなる生き方だと感じた。だからといってアールイはお客さんにはちゃんとお客さんと理容師の距離感を保っているし深く踏み込むわけではない。仕事を丁寧にこなしながら程よい距離感で接していた。初心を忘れず継続していることが素晴らしいと思った。
見返りを求めずに誰かのためになにかをすることは誰にでもできることではない。だけど、絶対にそんな姿を見てくれている人がいる。だから、そんな人が困っていたらちゃんと助けてくれる人が現れる。人生って誰かに優しさをあげてまた誰かから優しさをもらう、その繰り返しなのだと思った。
劇場をあとにする時、足取り軽く前向きな気持ちになれる作品だった。

(文/杉本結)

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『本日公休』
9月20日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

監督・脚本:フー・ティエンユー
出演:ルー・シャオフェン、フー・モンボー、アニー・チェン、ファン・ジーヨウ、シー・ミンシュアイ
配給:ザジフィルムズ / オリオフィルムズ

原題:本日公休 英題:Day Off
2023/台湾/106分
公式サイト:https://www.zaziefilms.com/dayoff/
予告編:https://youtu.be/uNcLfXTdBvo
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