美味しいは正義を超えた。『劇場版 おいしい給食 Final Battle』

2020年3月に公開された『おいしい給食』シリーズの劇場版第1作『劇場版 おいしい給食 Final Battle』。ドラマ版『おいしい給食』はテレビ神奈川、TOKYO MX他で2019年から放送され、シーズン1～3とシリーズ化されました。本作はシーズン1の完結編にあたり、劇場版第2作『劇場版 おいしい給食 卒業』（シーズン2の完結編の位置づけ）が2022年5月に、2024年5月には劇場版第3作『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』（シーズン3の完結編の位置づけ）が公開されました。果たしてシーズン4はあるのか!?

　ストーリーは、1980年代の中学校を舞台に給食マニアの教師・甘利田幸男（市原隼人）と、同じく給食マニアの生徒・神野ゴウ（佐藤大志）による、どちらが給食をより「おいしく食べるか」という闘いを描いた学園グルメコメディです。

　注目は何と言っても、市原隼人さん演じる甘利田先生の給食に対する変態ぶり、もとい、給食愛ではないでしょうか。
　普段は堅物で、授業を妨害したとして（実際はそこまでではない）生徒にバツとしてバケツを持たせて廊下に立たせたり、教職員との付き合いもなく打ち上げの誘いもあっさり断るような人物。ですが、こと給食に関しては全くの別人なんです。
　
　例えば、給食前に決まって流れる校歌を淡々と歌う生徒を前に、人目も気にせず一人キレッキレのダンス（着席につき上半身のみ）を踊ってみたり、ある日のメニューでクジラのオーロラソースが気になりすぎて、給食室まで下見に行ってしまうほどだったり。
　その食べ方一つとってもすごいんです。あまりのおいしさに感銘してオーロラソースをオーロラちゃんと命名したり、付け合わせのキャベツにオーロラちゃんをここぞとばかりにつけて幸せそうに食べ、けんちん汁につけたソフト麵を匂いまで堪能し、牛乳、デザートの牛乳ミカン寒天まで、ところどころ笑みをこぼしながらキレイに完食します。

　こうしてシンプルに食べる甘利田先生に対して、アレンジを効かせる神野くんという構図もまた一興です。けんちん汁を美味しくて飲み干してしまいたい衝動をオトナとして我慢した甘利田先生でしたが、神野君は思いっきり飲み干します。そして残ったソフト麺を細かくちぎって、オーロラちゃんにつけたり、クジラを載せてけんちん汁の具材、ネギも載せてオーロラちゃんをかけてと上手に給食を愉しみます。この二人の食べ方対決もとても味わい深いです。

　筆者は給食が楽しみだと思ったことがなかったので（それはそれで寂しい）、学校生活の楽しみの見つけ方は十人十色なんだと思った次第です。当たり前ですが。
　給食を楽しみにしている人はもちろん、給食が苦手な人も、学校になんだか行きたくない、夏休み気分からいまだに抜け出せないなんて人も、甘利田先生のものすごい食べっぷりに元気をもらえる一本です。

（文／森山梓）