もやもやレビュー

捕虜の女性剣士だけが大活躍。看板に偽りのみ!『ゴッド・ウォーズ』

ゴッド・ウォーズ [DVD]
『ゴッド・ウォーズ [DVD]』
ディラン・ボックス,テキン・ガーギン,デヴィッド・マイケル・ラット,デヴィッド・リマゥイー,エリック・フォースバーグ,ディラン・ボックス,ララ・ヘラー,ハッチェム・ヒッチャム,デヴィッド・W・グレイ,ケリー・B・ジョーンズ,ダニエル・ホイット
アルバトロス
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 本作はギリシャ神話のトロイア戦争をモチーフにしたアクション映画だ。ジャケットには「英雄vs魔神」とある。胸躍る内容なのだろうというわずかな望みは幼児が描いた絵を3D化したようなCGであっけなく打ち砕かれる。素人が適当に作ってもまだちゃんとした形になるのではないだろうか。

 トロイア戦争に勝利したオデュッセウス王らに対し敗北したトロイア王は復讐のため自らを生贄として魔物が出現する異界へと飛ばす呪いをかけた。クラーケンなどの魔物が襲い掛かる「死者の道」をたどり妊娠中の王妃の待つ故郷を目指す、というあらすじ。

 こう書いてあれば「オデュッセウス王が活躍するのだろう」と思うのが人情というもの。しかし、この作品でオデュッセウス王が活躍するシーンはほぼ皆無。「トロイア戦争を題材にした意味は何?」という感想しか出てこない。製作は安定のアサイラム。意味を求めるだけ無駄というものだった。

 では、活躍するのは誰かというと捕虜となったトロイアの女性剣士キルケ。大体の困難は彼女が剣で解決する。捕虜なのに側近よりも活躍し、側近が全滅してもキルケだけは生き残る。捕虜として逃げ出す隙はいくらでもあるのに健気に剣を振るう。
 物置と化しているオデュッセウス王は魔女の誘惑に篭絡されたり、ビッグフットのような巨人キュプロクスの寝首をかいたりする程度。主人公は誰なのだろう。徹底的に活躍しない。

 十数年ぶりに故郷にたどり着いたオデュッセウス王のもとにクラーケンが現れるが、これを倒すのはもちろんキルケ。自らの命と引き換えにして侵略国を守る。捕虜なのに。
 アサイラムの作品に意味や何かを求めることは無意味だと分かっていても「もう少し何とかならなかったのか?」という疑問だけが残る。

(文/畑中雄也)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム