もやもやレビュー

設定は練られているけど登場人物が大体バカと畜生『ゾンビ・サファリパーク』

ゾンビ・サファリパーク(字幕版)
『ゾンビ・サファリパーク(字幕版)』
ジェシカ・デ・ゴウ,マーティン・マッキャン,ダグレイ・スコット,スティーヴ・バーカー,ポール・ガーステンバーガー
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

ゾンビ映画の設定はサメ映画同様に大体やり尽くされているが、サメ映画ほど突拍子もない方向には進まず比較的視聴に耐えうる作品が多い印象。ただB級映画では要らん要素を付け足さないといけない掟でもあるのか、本作もご多分に漏れず蛇足が目立つ。もっとも、大体のB級映画は蛇足どころか足が本体だったりするので粗が目立つのは作品として面白かった証拠ではあるのだが。

 本作は20億人が犠牲になったゾンビとの戦争を経た世界で孤島にゾンビを集め狩りを楽しむ"リゾート"が舞台となる。戦争によるPTSDに苦しむ主人公のメラニーと、その彼氏のルイスは心の傷をゾンビ狩りで克服するよう医師に勧められ"リゾート"を訪れた。そんな時、施設の管理システムに異常が発生し管理されていたゾンビが解放され人々を襲い始める。さらにはゾンビ殲滅のため空爆を実施すると知らされる......という内容。

既視感はたっぷりと覚えるが、そこは無視して視聴を続けるとゾンビの権利活動家とかゾンビでリゾート施設を作った社長とか、物語の主軸になる人物の動機が全部バカか鬼畜。大体、主人公のメラニーに「ゾンビを狩ればPTSDが治るのでは?」なんて言う医師がいてたまるかと。この後も登場人物の皆さんはあれこれ主張するが子どもの屁理屈よりも更に酷い内容でなかなかびっくりする。

物語は誰かが素っ頓狂なことをすることで回るから多少のバカげた行動などは目をつぶって楽しむのがいいとは分かっていても、作中の人物が全員バカと畜生では興を削がれる。管理システムを破壊したのはゾンビの権利活動家のうっかりミスだし、リゾート施設の社長は戦争難民をゾンビにして狩りの的にしているし。そういう連中が片っ端からゾンビにやられるので、その辺りはスカッとするかも知れない。
空爆される孤島から脱出した主人公が施設を告発して終盤に向かい、ホラー映画のお約束として孤島から大量のゾンビが上陸する場面で終わる。

作品の進行を意味もなく停滞させる人間関係の描写など探さなくとも粗は多々あれど、ゾンビを商売にしようとしたり戦争難民を"活用"したりする発想は面白かった。
ただ、上記のようにもう少しキャラクターに深みを持たせてくれたらちゃんとした作品になったのではないかと惜しまれる。
完全なB級映画として視聴するにはちょくちょく優れた描写があるため、どういうスタンスで楽しめばいいのかと考えてしまう。

(文/畑中雄也)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム