『愛なのに』の後に続く言葉を考えたくなること必至です。
- 『愛なのに』
- 城定秀夫,瀬戸康史,さとうほなみ,河合優実,中島歩,向里祐香
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本作は、『性の劇薬』『アルプススタンドのはしの方』の城定秀夫監督作品。城定監督と、『愛がなんだ』の今泉力哉さんが互いに脚本を提供し、R15+指定のラブストーリーとなる劇場映画を監督する企画として制作された第一弾です。
古本屋の店主、多田(瀬戸康史)には忘れられない人・一花(さとうほなみ)がいましたが、突然常連だという女子高生の矢野岬(河合優実)から告白され、求婚までされます。
いきなりプロポーズ⁉と思いますが、本作には良く言えば自分に正直に、悪く言えば自己中心的な人物が他にも多数出てきます。
例えば。多田の片思いの相手・一花は結婚を控えているのに、結婚相手の亮介(中島歩)に浮気されます。亮介の浮気相手は、一花と亮介が結婚式を挙げる予定の式場のウェディングプランナーの美樹(向井祐香)で。一花がドレスを試着する際にもアイコンタクトをとってみたり、二人で会ってる時にも一花の話を平気でする無神経な亮介と美樹だったり。
相手は分からずとも浮気を知ってしまった一花は、亮介に自分と同じ屈辱や裏切られた思いをさせたいという目的だけで浮気します。その相手に、昔自分に好意を持ってくれた多田を選び、一夜だけと称して男女の関係を持ってしまう一花。
また勝手に娘(河合優実)へ宛てた、多田からの手紙を読み、一方的に淫行だと決めつけて、面識のない多田の自宅に突然押しかけて、「気持ち悪いんですけど」と連呼する岬の親。
岬に告白し何度も振られても諦めきれず、岬の好きな人に会わせてほしいと会うだけの約束が、多田に話かけ一方的にキレて殴りかかる男子高校生。
そのくだりでエキストラのような、伏線のような、そんなタイミングで出てくる親子がいて、毎回公園で逆上がりの練習をしていますが、なかなかできない子供に「一回諦めたら癖になるぞ」と叱咤激励を飛ばすも、実は逆上がりができなかったお父さん。
タイトルの『愛なのに』の後に続く言葉は、きっと"愛なのに勝手だよね"とか、"愛なのに自己中すぎ"などと、思わずつけたくなってしまいました。余談ですが。
話を戻すと、物語は大人の身勝手な恋愛模様と、高校生の岬の純粋に多田に恋をするピュアな恋模様の対比がとても印象的。人間のエゴな部分を観た後だから余計に刺さるのかもしれませんが。個人的には河合優実ちゃんが可愛いくて、それだけで胸キュンしてしまいました。死語ですねすみません。
本作の第二弾も観てみたいと思わずにいられない一作です!
(文/森山梓)