もやもやレビュー

ホラー部分の出来がいいゆえにコメディ要素の粗が目立つ『口裂け女inL.A.』

口裂け女in L.A. (字幕版)
『口裂け女in L.A. (字幕版)』
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 本作は日本の4人の監督がアメリカの俳優を起用した4編のオムニバスのような形となっている。ぼんやりと見る分にはぞっとさせるような描写があるも、コメディに寄せているせいか怖がればいいのか突っ込めばいいのか反応に困る。

 視聴後に思い返すと「あ、つながっていたんだな」と納得できるが監督がそれぞれ撮ったせいか各編でテイストが異なり同じ映画を見ている気にならない。そのため都度で没入感が削がれてしまう点が気になった。後味の悪いコメディホラーって最悪な気分になれるのだが......。怖がらせるのか笑わせるのか、どちらかに振り切って欲しい。

 口裂け女に友人のモニカを殺害され、自身も悪夢に悩む主人公のクレアは、日本の都市伝説の研究をしている姉のサラが口裂け女なのではないかと疑い出す。口裂け女など都市伝説の調査を進めるうちにロサンゼルスの各地でこっくりさんや幽霊など日本の都市伝説と同じ事件が起きていることが分かる、という内容。何を言っているのか分からない。分からないが本作はこれよりも脈絡がない。

 冒頭に述べたようにオムニバスのような形式なので口裂け女、こっくりさん、陰陽師、呪いの藁人形など混乱を加速させる要素が出てくる。特に陰陽師は何故か寺のお坊さんのような身なりをしている。それが邪教の牧師と戦うのだ。陰陽道とは?

 その一方で、エンディングはこれぞJホラーという救いのなさ。不気味な描写、心臓に悪い映像群など視聴後に思わず後ろを振り向いてしまうくらい怖い。

 ホラーだけならあらゆる雑味を不条理の一言で片づけられるが、コメディだとそうはいかない。下手にホラー部分の出来がいいためにコメディ要素の粗が目立ち笑えない違和感にしかならない。

 その辺りをカットした作品だったら映画としての出来は大層よかったと思われるが、改めて不要と思う部分をカットした場合を想像したら異様に短い短編になってしまう。もう少し何とかできたのではないかと思うともったいない作品だった。

(文/畑中雄也)

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