生え変わり、そして色づく恋 『ベイビーティース』
- 『ベイビーティース』
- エリザ・スカンレン,トビー・ウォレス,エシ-・デイヴィス,ベン・メンデルソーン,シャノン・マーフィ,ジャン・チャップマン
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笑いたいから底抜けに明るい映画を観たい、だとか、大味サイコーっていう気分のときはあるけれど、泣きたいから、泣くために悲しい映画を観よう、となったことはないように思う。この作品は泣かせにかかってるなと気付いた瞬間に、どこか構えてしまう。だから「それっぽいぞ」と思うものは、あらすじや予告編を見ないようにしている。ちょっと偏屈なのかもしれないが、それくらいの方が素直に見られる。
不治の病に侵された少女と、ガラの悪い非行少年が恋に落ちる。このジャパニーズコミックな設定に、のけぞってしまいそうになったけれど、これがとても良かった。「ストーリー・オブ・マイライフ」で注目を集めたエリザ・スカンレン。モーゼス役には、本作でヴェネチア国際映画祭・最優秀新人賞を受賞したトビー・ウォレス。たまらなく愛おしく、素敵な作品だと思う。舞台が元になっているとあって、ちょっと独特の立ち位置や、台詞回しも印象に残る。
「ベイビーティース」とは乳歯のことを指す単語で、実際に主人公ミラの乳歯が抜け落ちるシーンも劇中で描かれているが、それ以上にさまざまな意味を含むタイトルでもある。
(文/峰典子)