もやもやレビュー

新生活がスタートしているこの時期にこそ観てほしい。『かがみの孤城』

かがみの孤城
『かがみの孤城』
當真あみ,北村匠海,吉柳咲良,板垣李光人,横溝菜帆,高山みなみ,梶裕貴,矢島晶子,美山加恋,池端杏慈,吉村文香,藤森慎吾,滝沢カレン,麻生久美子,芦田愛菜,宮﨑あおい,原恵一,丸尾みほ
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 本作は、2018年に本屋大賞を史上最多得票数で受賞した辻村深月さんのベストセラー小説を、クレヨンしんちゃんで有名な原恵一さんを監督に迎え、数々の名作青春アニメを作ってきたA-1Picturesが制作しました。

 中学一年生の安西こころは真田さんという女子がいるグループから嫌がらせを受けたことをきっかけに、不登校になります。
 ある日、いつものように自宅で過ごしていると、突然部屋の鏡が光ります。こころは、驚きながらも恐る恐る鏡を覗いてみると、吸い込まれるように鏡の中に入ってしまいます。そこには、立派なお城と、6人の見知らぬ中学生がいました。そして、「オオカミさま」と呼ばれる狼のお面をかぶった少女から、7人は選ばれた存在で、この城のどこかに秘密の鍵が一つ隠されていて、それを見つけた人だけどんな願いも叶えられるのだ、との説明を受けます。

 一年間という限られた時間の中で、初めは戸惑いながらも共に過ごすうちに、7人にはある共通点があることがわかります。また、お互いが抱える悩みも少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていきます。

 こころは、母親にも言えなかった真田さんからの悪質な嫌がらせを仲間に話すことができ、怖かった気持ちを受け止めてもらます。自分を肯定してもらえたことで、母親にも打ち明けることができ、やっと事実を知った母親は学校と闘うとし、先生に事の深刻さを理解してもらえるように努めます。その甲斐もあって、学年が上がる際に、真田さんのグループとは別のクラスにする配慮をしてもらったり、また、他校への転校も選択肢にいれて、こころのしたいようにと、手を尽くしてくれます。

 どうせ言っても意味ないしとつい思ってしまいがちですが、誰かに気持ちや悩みを話すことで、何かが変わることってあると思います。悩みが解決することも勿論のこと、なにより話して気持ちが少しでも楽になったり、悩みをもつ自分を受け止めてもらえるだけで前に進む力になる。
 新年度が始まって、緊張したり憂鬱な気持ちを抱えている人にこそ見てもらいたい一作です。選択肢も、居場所もひとつじゃない。色んな人がいて、勇気がいることもあるけど、様々な関わりを持ってみることも大切だと学ばされます。自分を大切に、でも視野は広く持てるといいと思いました。
 物語の、7人の共通点や鍵の行方も目が離せないストーリーです、ぜひに。

(文/森山梓)

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