もやもやレビュー

前代未聞、吸血鬼の食器洗い姿がのぞける映画 『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(字幕版)
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(字幕版)』
タイカ・ワイティティ/ジェマイン・クレメント/ジョナサン・ブロー/コリ・ゴンザレス=マクエル/スチュー・ラザフォード/ジャッキー・ヴァン=ビーク,タイカ・ワイティティ
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

登場するのは、ニュージーランドの首都ウェリントンでシェアハウス生活を送るヴァンパイアたち。まさにタイトルそのまんまなのであるが、テレビ番組のクルーが彼らたちの日常に密着取材しているという設定なのが最大のチャームポイント。たまに映画でみるこの形式は、モキュメンタリーと呼ばれる。つまりはmock(まがいもの)のdocumentary(実録)というわけ。クルーが劇中に登場することはないが、吸血鬼たちに行うインタビューが挿入されている。それを含むほとんどのセリフが俳優たちのアドリブらしく、さながらリアリティショーに含み笑いがこぼれてしまう。

この作品の監督を務めながら、ヴィアゴを演じるのがタイカ・ワイティティ。コメディアンでもあり俳優でもあり、インディペントな映画から「マイティ・ソー」の監督までこなし、スターウォーズの新作に取り組んでもいる稀有な人である。(近年では歌手リタ・オラのパートナーとも言える)

せっかくなので、ざっと名前と年齢を挙げてみよう。現代ヴァンパイアのヴィアゴ(379歳)、ディーコン(183歳)、ヴラド(862歳)、そしてピーター(8000歳)。全員に御年と付けて差し上げたいところなのだが、183歳のディーコンレベルではまだまだやんちゃ盛りなのだそうだ。

世の中のシェアハウスと同じように、食器洗いや女の連れ込み方で揉めたり、夜中に飲み歩いたりと、楽しい日々を過ごしていたヴァンパイアたち。しかしある日、ピーターが大学生ニックにうっかり噛みついてしまい大騒動が巻き起こる......。トロント国際映画祭やシッチェス映画祭などでも観客賞を受賞した、ワイティティ独特の世界観をぜひ楽しんでほしい。

(文/峰典子)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム