もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2024年2月号

映画『落下の解剖学』(2月23日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』三十回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
2月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(2月2日公開)
公式サイト:https://dumbmoney.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=3_3uW1yOT2g

★メインs.jpg 全米を揺るがした前代未聞の社会現象"ゲームストップ株騒動"を映画化した実録エンターテイメント『ダム・マネー ウォール街を狙え!』。倒産間近と囁かれていたゲームストップ社の株に会社員のキース・ギルは全財産5万ドルをつぎこんでいた。キースは「ローリング・キティ」という別名義で動画を配信し、この株を過小評価しているとネット住民たちに訴えるようになる。その動画を見て、彼の主張に共感した個人投資家たちが株を買い始めたことで株価がまさかの大暴騰をしていくことになる。
 ウォール街の億万長者たちは空売りで儲けようと企んでいたのだが、キースたちが株を買ったことで大損害を与えられることになる姿も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。とはいえ、実話を元にしているのでキースたちがどんな結果や末路を辿ったかは検索すれば出てくるでしょう。ウォール街など富裕層で既得権益を持っている人たちに対して、名も無き一般市民である個人投資家たちがSNSなどを通じて結びついていき、ある意味で階級闘争の物語になっているようです。
「平凡な男には希望なんてない」と妻に話すキースの姿もありますが、一発逆転していく彼の勇姿をスクリーンで見て、テンションをあげていきましょう!

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『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
2月2日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.

『瞳をとじて』(2月9日公開)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/close-your-eyes/
予告編:https://youtu.be/Vls2kIjz-yY?si=L4ucGPmdO7gqvPh0

★main_船上のミゲル_@ManoloPavon.jpg 『ミツバチのささやき』で知られる巨匠ビクトル・エリセ監督、31年ぶりの長篇最新作『瞳をとじて』。22年前に映画の主演俳優のフリオが撮影中に失踪した。そのため、撮影は中断され、映画は未完成となった。監督だったミゲルはフリオの親友であり、その件で映画監督を辞めてしまっていた。
 年老いたミゲルは親友の消息と自らの過去を辿る旅に出ることになる。「何? 本当に彼なのか?」とミゲルが電話相手に聞いているシーンも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。「彼は手に入れたのかもしれない。姿を消して、自分を消し去って」というミゲルのセリフも予告編にはあり、フリオの消息はわかるのでしょう。フリオについては「老い」を恐れ、いろんな噂に傷ついていたと言っている人もいるので、若い頃のままでフィルムに焼きついた状態を残しておきたいと考えた可能性もありそうです。そして、『瞳をとじて』というタイトルからは過去のことを思い出すようなニュアンスも感じられます。
 フリオは自分を無くすことで、映画の中や自分を知っていた人たちの中に自分を残そうとしたのではないでしょうか? 最後は痴呆症になって全てを忘れた彼とミゲルが再会し、ミゲルがカメラを彼に向けて回しているラストシーンかもしれません。

★sub1_撮影中のふたり_@ManoloPavon.jpg

『瞳をとじて』
2月9日(金) TOHO シネマズ シャンテ 他 全国順次ロードショー
配給:ギャガ
©2023 La Mirada del Adiós A.I.E, Tandem Films S.L., Nautilus Films S.L., Pecado Films S.L., Pampa Films S.A.

『ボーはおそれている』(2月16日公開)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/beau/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=N1vlJGAve2Y

★メイン.jpg A24×『ミッドサマー』のアリ・アスター監督×ホアキン・フェニックスによる『ボーはおそれている』。母が怪死したという連絡を受けたボー。「帰省が壮大な旅になるオデッセイスリラー」というコピーが予告編に出てくるように、ボーは車に轢き殺されかけたり、目覚めた先で女性に言われたテレビのチャンネルの数字をつけると自分を監視カメラで撮影している映像が映っていたり、ガラスを突き破って逃げる姿なども予告編で見ることができます。ボーは一体何に巻き込まれているのでしょうか?
 ここからは妄想です。予告編を見てみると「すべてボーの妄想なのでは?」と思うような映像ばかりです。ボーがおそれているのは母なのでしょう。だからこそ、帰らないといけないけど、帰りたくないという相反する気持ちによって、自らトラブルに飛び込んでいってしまう。あるいはどこか神経症的な問題を引き起こして彼に現実ではない世界を見せている可能性もあります。
 最後になんとか実家にたどり着くとまだ火葬されていない母の死体があり、ボーは実家と共に燃やしてしまい、住んでいる家へ帰っていく。しかし、翌朝に目が覚めるとまた母が怪死したという電話がかかってくる。永久に母を殺しにいかないといけないという恐ろしいラストが待ち受けているかもしれません。

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『ボーはおそれている』
2月16日(金)全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

『落下の解剖学』(2月23日公開)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/anatomy/
予告編:https://youtu.be/LoEISyEcFsc?si=RARWS5N3zoh8nv8m

【メイン】Anatomie d'une chute 12 (c) LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE.jpg 第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエ監督『落下の解剖学』。視覚障害のある息子が見つけたのは山荘の三階から転落し倒れていた父だった。母であり妻のサンドラはすぐに救助を要請したが、彼はすでに息絶えていた。
「死因は不明。転落事故とは考えづらい。不審死だ。現場にいたのは君だけ。そして君は...彼の妻だ」と警察から言われ、「待って、私は殺してない」と話しているサンドラの姿も予告編で見ることができます。しかし、「仲睦まじい夫婦」だと周りから思われいたが、転落の前日には夫婦喧嘩していたこともわかり、事故ではなく妻による殺人ではないかと疑いがかけられていく。
 ここからは妄想です。「自分で選んだ人生に文句ばかり、あなたは被害者じゃない」「卑怯だぞ。お前に人生を奪われた」という夫婦喧嘩も予告編にあり、二人にはなにか謎か周りに隠していたことがありそうです。
 やはり今作のキーマンは息子でしょう。もしかすると、夫婦は息子の両親を殺して、彼らに長年成りすましていた。という展開もありえるかもしれません。一番怖いのは息子が実は視覚障害があるフリを父親にさせられていて、すべてを見ていて知っていた。だが、本当のことはずっと言わずにいたというものではないでしょうか?

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『落下の解剖学』
2月23日(金・祝) TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
配給:ギャガ 
©2023 L.F.P. - Les Films Pelléas / Les Films de Pierre / France 2 Cinéma / Auvergne‐Rhône‐Alpes Cinéma


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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