名匠が日本を舞台に撮る『PERFECT DAYS』
『PERFECT DAYS』 12月22日(金) よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
『パリ、テキサス』(84)、『ベルリン・天使の詩』(87)などの傑作を世に送り出してきた名匠ヴィム・ヴェンダースが、今回作り上げた作品の舞台はなんと日本の渋谷。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)。彼は淡々と過ぎていく日々に満足している。毎日を同じように繰り返しているように見えるが、彼にとってはそうではなかった。毎日はつねに新鮮な小さな歓びに満ちていた。まるで風に揺れる木のような人生である。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読み耽るのが、歓びである。いつも持ち歩く小さなフィルムのカメラで木々を撮る。彼は木が好きだった。自分を重ねているのかもしれない。あるとき彼は、思いがけない再会をする。それが彼の過去にすこしずつ光をあてていく。
今年のカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した本作の主演をつとめたのは、監督もリスペクトするという日本の名優、役所広司。
本作、平山の台詞の少なさに最初は戸惑った。黙々とトイレを清掃している男性を眺めるというのはなかなかない体験だったからだ。台詞が少ないのを忘れるくらい、平山の表情からその時々の感情は読み取れた。寡黙なのかと思いきや好きなことがちゃんとあって、1日1日をしっかりと楽しんでいる。
それがわかって、平山という人物への親近感がわいてくる。
トイレの清掃員というだけで平山を汚いもののような扱いをする母親が途中登場するのだが、登場は一瞬だったのにかなり強く印象に残るシーンだった。このシーンの意味はかなり重く感じた。
日本のトイレは世界でもかなり綺麗と言われているからこそ今回スポットを当てられたのだと思う。
トイレが綺麗なのは当たり前のようになっているが、日々清掃してくれる人がいるおかげなのだということを忘れてはいけない。
清掃員の方に出会った時には会釈程度になってしまうが『ありがとうございます』という言葉を言ったほうが良いのかもしれない。
人生を自分の好きなものや好きな場所で楽しく彩る、平山の丁寧な生活がじんわりと心が温かくなった。ラストの展開も、それがあるからこそ刺さるものとなっていた。
これは大きなスクリーンでみてほしい。
(文/杉本結)
『PERFECT DAYS』
12月22日(金) よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
配給:ビターズ・エンド
原題:PERFECT DAYS
2023/日本/124分
公式サイト:https://www.perfectdays-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/x_j-5QaUxB8
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