もやもやレビュー

静かな日常の中にある幸せを感じる『枯れ葉』

12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー

カンヌ国際映画祭審査員賞に輝いたアキ・カウリスマキのラブストーリー。北欧の街ヘルシンキ。理不尽な理由で仕事を失ったアンサと、酒に溺れながらも工事現場で働くホラッパはある夜、カラオケバーで出会い、互いの名も知らぬまま、惹かれ合うが......。

監督が今までに撮ってきた労働者三部作『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』の続編となるのが本作ということだった。

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フィンランドの映画なのだが、ウクライナをはじめとした時事問題にも、ラジオから流れてくる情報として触れている。
はっきりと映像としてみえるなにかではなく、日常の中に溶け込んだ音としての情報というところに監督らしさを感じた。
ドラマチックな出来事が起こるわけではない本作は、労働階級にいる男女のリアルな日常を覗きみたような感覚になる作品だ。

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一瞬の輝きの後に、地面に落ちて積もっていく『枯れ葉』という題名が作品の大切なところをついていて絶妙なタイトルセンスだった。
日常の中にあるほんの少しの幸せを共有できる相手がいたらいいなと思える作品だった。

(文/杉本結)

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『枯れ葉』
12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー

監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
配給:ユーロスペース

原題:『KUOLLEET LEHDET』/英語題:『FALLEN LEAVES』
2023/フィンランド・ドイツ/81分
公式サイト:http://kareha-movie.com
予告編:https://youtu.be/eYpgp6ZPGQQ
© SPUTNIK OY 2023

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