もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2023年1月号

『イニシェリン島の精霊』( 1月27日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』十七回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
2023年1月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『ファミリア』(01月06日公開)
公式サイト:https://familiar-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/5vmq7rXEaig

※メイン.jpg 『八日目の蟬』を手がけた成島出監督による『ファミリア』。陶器職人の誠治(役所広司)の息子の学(吉沢亮)はアルジェリアに赴任していたが、難民出身のナディア(アリまらい果)と結婚し一時帰国した。学は仕事を辞めて父の跡を継いで陶器職人になりたいと告げる。
 在日ブラジル人の青年のマルコス(サガエルカス)は半グレに追われている時に誠治に助けられる。誠治に父の面影を感じたこともあってマルコスは焼き物に興味を持つようになる。また、マルコスたち在日ブラジル人が住んでいる団地に学が遊びに行って交流を深めているシーンも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編では半グレ集団の暴力シーンや傷だらけのマルコス、学が危険な目に遭ったと知らされる誠治の姿があります。実の息子の学と他人だけど息子のようになっていくマルコス、という二人の息子を救うために父である誠治が自分を犠牲にして彼らを救おうとする物語になっていくのはないでしょうか?
 半グレのボス(MIYAVI)を誠治が殺してマルコスとその恋人を救うものの、死んでしまう。だが、彼の臓器が事故に遭った学へ移植されることで、息子たちを救うことになる。最後は二人の息子が父の跡を継いで陶器職人になっているというラストかもしれません。

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『ファミリア』
2023年1月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
配給:キノフィルムズ
©2022「ファミリア」製作委員会

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(01月13日公開)
公式サイト:https://shesaid-sononawoabake.jp/
予告編:https://youtu.be/yHhz6qxYTEk

★メイン_2554_D012_00245R3_R.jpg ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道に基づく映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』。ハリウッドの"絶対権力者"で映画プロデューサー・ハーヴェイ・ワインスタインは長年に渡って「性的暴行事件」を繰り返していた。しかし、それらの事件は隠蔽されたり、被害にあった女性たちは声をあげられないままだった。
 ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)はワインスタインによる性的暴行について調べ始めるが、被害に遭った女性たちは示談に応じていたり、トラウマで証言ができなくなっていた。そして過去に何度も記事がもみ消されてきたことを知るのだった。
 ここからは妄想ですといいたいですが、この映画で描かれたように一つの記事がきっかけで世界中の「#Me Too運動」に火がつきました。もちろん加害者であるワインスタインは許されませんが、同様に被害者が守られないで加害者が守られてしまうシステムや法律にも問題があります。
 日本の映画業界でも性加害の問題に対して様々な動きが今年起きました。今まで当たり前だったものやおかしいと声を上げても無視されてきたようなものに自分が気付けるのか、そのことが試されているようにも感じます。劇場で観てしっかり考えたいです。

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『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
1月13日(金)より全国公開
配給:東宝東和
© Universal Studios. All Rights Reserved.

『キラーカブトガニ』(01月20日公開)
公式サイト:https://killer-kabutogani.com/
予告編:https://youtu.be/TvZryVP1_gs

 天然記念物のカブトガニが大量発生して人間を襲う『キラーカブトガニ』。海で人間を襲うといえば定番はサメですが、今作ではなんとカブトガニが人類の敵になるようです。「地獄の天然記念物、人間食べ放題。」と予告編にも出てきますが、カブトガニは海辺だけではなく、なんと地上にも進出して街で人間を襲い始めます。
 ある女性が「カブトガニ科の新種の生物よ」と言い、男性が「ヤツらは3種類いる」と言うセリフも予告編にあります。その中にはプレデターのような姿の人間と変わらないサイズのものもいるようです。もはやカブトガニではない気もしますが。
 ここからは妄想です。カブトガニの青い血から作られる試薬がこのコロナパンデミックになってから以前に増して大量に作られています。青い血を採取した後には海に戻していますが、多くの個体はその後死亡するようです。その試薬を作る際に好奇心で実験をした科学者がカブトガニに人間やいろんな動物の遺伝子を混ぜて作ったのがこの殺戮カブトガニかもしれません。
 カブトガニの青い血はエンドトキシン(内毒素)と反応するとその血球であるアメボサイト(変形細胞)が凝固して塊となってしまうので、最後にはエンドトキシンをカブトガニに放射して対峙するという科学的なラストなのではないでしょうか?

『キラーカブトガニ』
1月20日(金)より全国公開
配給:エクストリーム

『イニシェリン島の精霊』(01月27日公開)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/bansheesofinisherin
予告編:https://youtu.be/THehyBCiFGc

メイン_001_BANSHEES_v220707_Tied_2.0_23.98fps_G2-70072.00_08_00_05.Still003_R.jpg 『スリービルボード』のマーティン・マクドナー監督最新作『イニシェリン島の精霊』。アイルランドの孤島に住むパードリック(コリン・ファレル)が長年の友人であるコルム(ブレンダン・グリーソン)からある日絶縁を告げられる。パードリックが「俺が何かしたなら教えてくれ」と聞くとコルムが「何もしてないさ、ただ嫌いになった」と言うシーンや、コルムがパードリックに「今度俺に話しかけたら、ハサミで俺の指を切ってお前にやるよ」というシーンなどを予告編で見ることができます。なぜ、コルムは急に絶縁をしたのでしょうか?
 ここからは妄想です。タイトルに「精霊」とあるので超常現象のようなことが彼らに起こるのかもしれません。もしかするとコルムはその「精霊」がやってくるのを知っていて、パードリックを自分から遠ざけて危険な目から守ろうとしているのかもしれません。しかし、予告編を見る限り不穏な感じが濃厚で、コルムが友人のことを思っての行動でもなさそうです。
 「精霊」がやってくるが「死の宣告」のようなものだとすれば、死ぬことを考えたコルムが今までは自分や島の関係性を考えて、嫌々ながら仲良くしていたことを最後に諦めて、素直になったという本当に怖い真相かもしれません。これだと観終わってかなり凹みそうです。

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『イニシェリン島の精霊』
1月27日(金)全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」連載中です。

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