『生きる―LIVING―』をみて、生きる意味を考えた。
- 『生きる LIVING』
- オリヴァー・ハーマナス,カズオ・イシグロ,ビル・ナイ,エイミー・ルー・ウッド,アレックス・シャープ,トム・バーク
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自分がもし余命わずかだと知ったら...? 寿命は人それぞれ違いますが、限りある命。大切に日々生きなければと思わされる本作です。
2022年のイギリス映画。オリヴァー・ハーマナス監督が、カズオ・イシグロ脚本で、1952年の黒澤明の日本映画『生きる』をリメイクしました。
1953年のロンドンで、公務員のウィリアムズ(ビル・ナイ)は、役所の市民課勤めで、部下に煙たがられながら事務処理に追われる毎日を過ごしていました。すでに妻を亡くしていて、同居する息子夫婦とは会話もあまりなく、家では孤独同然でした。
そんな中、彼は医者から癌であることを宣告され、余命半年であることを知ります。ショックから仕事を休み、海辺のリゾート地に行って羽目を外したり、ロンドンに戻っても、ばったり会った元・部下のマーガレットと食事をするなど、無断欠勤を続けます。
生きる意味を見失い、失意の日々を過ごす中、マーガレットの明るくキラキラと前向きな姿(例えば、レストランやデザートにいちいち感激したり、同僚にこっそりあだ名をつけて笑いに変えたり、転職してやりたいことに一歩踏み出したり)に刺激を受けます。
そして、仕事に復帰したウィリアムズは、まるで人が変わったかのように仕事に取り組みます。以前に、どこの部署からもたらい回しにされ、市民課でも同様に放置していた案件で、汚水まみれの小さな資材置き場を子供達の遊び場に変えてほしいというものがありました。この案件に無心になって取り組み始めたのです。土砂降りの中、現場に部下を引き連れて向かったり、渋る役人やお偉いさんを説得したり、他の部署にもイエスをもらうまで席を離れなかったり、協力を得られると部署全員に感謝を伝えたり。
そうして出来上がった遊び場は、子供達はもちろん、陳情した女性たちにとても感謝され、また部下たちもウィリアムズから感銘を受け、この先の仕事の手本とされたのでした。
買い物をしてお酒を飲んだり遊びに行ったり、したいことをする自由な時間も良いけれど、それだけだともしかしたら満たされないし何も残らないのかもしれない。限りある時間のなかで、自分が何をすべきか生きる意味を考えたくなる本作です。
(文/森山梓)