顔を浸せば、思い通りの美人に『整形水』
- 『整形水(吹替版)』
- 沢城みゆき,諏訪部順一,チョ・ギョンフン(조경훈)
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韓国発のアニメホラー『整形水』。実写化はとても難しそうなグロイ描写を使ったホラーで、アニメだからこそ楽しめる要素が満載。しかし、現実離れしている話ではなく、取り扱っているのは私たちにとっても身近な問題でした。
主人公は、自分の外見に強いコンプレックスを持っているイェジ。彼女は芸能人のメイク担当として働いていました。そんな彼女、芸能人のミリから「豚」と罵られ、さらには自分がエキストラとして無理やり出演させられたテレビ番組がきっかけでネットで容姿をバカにされてしまうのです。数日後、仕事を辞めて引きこもり生活をしていたイェジのもとに、「整形水」のサンプルが送られてきます。何やら顔を20分浸せば、思い通りの美人になれる......とのこと。早速使ってみたイェジですが、顔は美人になったものの、体はふくよかなまま。かなりアンバランスな見た目になってしまいます。そんな彼女は、早速、送り主の元へ。整形水の送り主は、「イェジこそ完璧な広告塔になる」と話し、整形水を彼女の全身に使って完璧なルックスを作り上げます。
大変身したイェジが驚いたのは、周囲の反応。これまで下に見られていたのが、誰もがこちらを振り返る......美人ならではの周りに与える影響が、イェジにとってどんどん"甘い蜜"となり、その快感が手放せなくなってしまうのです。もちろん、整形水への依存がどんどん高まり、物語はとんでもない方向へと発展していきます。
私の中で一番驚いたのは、イェジが「いい子」ではないこと。内面の美しい子が、美しい外見を手に入れて、どんどん狂っていくというのを想像していたのですが、イェジは引きこもりの間、ネットでミリへの誹謗中傷を書き込み、親にも八つ当たり。美貌を手に入れた後も、親に巨額のお金をせがむ。しかし視聴者が求める理想的なキャラクター(応援したくなるキャラクター)ではなく、現実世界にいるであろうSNS社会に病んだキャラクターを中心に持ってくることで、ルッキズムや整形依存などの問題が"リアル"に浮かび上がってくるなと思いました。もちろんホラー的衝撃映像もありましたが、それよりも問題提起が心にグサッと刺さる一本でした。
(文/トキエス)