もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2022年8月号

『バイオレンスアクション』(8月19日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』十二回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、こんなご時世ですが映画館で観てもらえたらうれしいです。
8月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『裸足で鳴らしてみせろ』(8月6日公開)
公式サイト:https://www.hadashi-movie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=HMa4dYYS9RM

『裸足で鳴らしてみせろ』.メイン.jpg 日本を代表する監督たちの商業デビュー作を送り出してきた「PFFスカラシップ」第27弾となる工藤梨穂監督『裸足で鳴らしてみせろ』。盲目の義母・美鳥(風吹ジュン)から病室で通帳を渡される槙(諏訪珠理)。彼は義母から「これで、見てきてくれない世界を」と言われる。開いたドアの近くのベンチに座ってそれを聞いている直己(佐々木詩音)がいた。
 槙と直己はレコーダーを持って、美鳥に聞かせるための「世界の音」を求め、偽りの世界旅行を始めることになる。プールに浮かべたビニールボートに乗る二人、槙がマイクに「カプリ島に来たよ、青の洞窟にいる」というシーンも幻想的で印象に残ります。
 ここからは妄想です。美鳥から渡された通帳にはお金はなく、そのことを言えない槙は直己と共に、自分達による「世界の音」を作り出し、それを彼女に聞かせようと動き出すのでしょう。
 予告編を見ていても、それが偽りであっても二人の冒険であり、友情を越えた想いが芽生えていく、きらめきと残酷さを秘めた青春の日々のようです。肉体的にも向き合う、触れあうようになる描写もありますが、それは冒険と共に甘酸っぱく残り、互いに忘却できないものとして刻まれるはずです。個人的には予告編を見ると青春映画の新たなマスターピースになる予感がするので、絶対劇場で観ます!

『裸足で鳴らしてみせろ』サブ2.jpg『裸足で鳴らしてみせろ』
8月6日(土)より、ユーロスペース ほか全国順次ロードショー
配給:一般社団法人PFF/マジックアワー
© 2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』(8月12日公開)
公式サイト:https://mywife.ayapro.ne.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=GnfSFCZY-GQ/a>

main.jpg 『心と体と』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したハンガリーの鬼才=イルディコー・エニュディ監督最新作『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』。
 船長のヤコブ(ハイス・ナバー)は友人と一緒にいたカフェで、「結婚しようと思う」「この店に最初に入ってきた女性と」と告げ、入店してきた美しい女性のリジー(レア・セドゥ)に求婚し、本当にそのまま結婚してしまう。
「陸の仕事を探すよ」というヤコブのセリフもあり、二人は互いに必要な存在となっていくのが予告編でも見ることができます。そこにリジーの友人のデダン(ルイ・ガレル)が現れたことで夫婦の関係性が徐々に変化していってしまうようです。
 ここからは妄想です。予告編では夫婦の「四ヶ月の航海だ」「心配しないで。消えたりしないわ」というやりとりがあります。妻が消えたり、なくなったりして、夫が探すという物語は多いですが、この物語は逆で最後には船長である彼がいなくなってしまう、彼女の元から消えてしまうというラストシーンではないでしょうか?
 海が仕事場である彼にとってはやはり陸とは帰る場所ではあるものの、非現実的な一面もあるはずです。その象徴になっていくのがリジーであり、彼女との愛が終わると、彼はもう海にしか居場所がなくなる。そんなエンディングが浮かびました。

sb1.jpg『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』
8月12日(金)より、シネスイッチ銀座、ユーロスペース ほか全国公開
配給:彩プロ
©2021 Inforg-M&M Film  - Komplizen Film  - Palosanto Films  - Pyramide Productions  - RAI Cinema  - ARTE France Cinema  - WDR/Arte

『バイオレンスアクション』(8月19日公開)
公式サイト:https://www.va-movie.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=0j3-0-HbWR0

VA_メイン_wide.jpg 脱力系アクションエンターテインメント映画『バイオレンスアクション』。ゆるふわピンクボブの菊野ケイ(橋本環奈)は昼は専門学校に通い、夜は指名No.1の殺し屋として活動していた。
 組織からの指令を受けて裏切ったヤクザの組員を始末しようとするが、標的の金庫番は顔見知りのテラノ(杉野遥亮)だった。彼を始末しなかったことで、殺し屋たちとヤクザとの抗争が勃発してしまう。最狂の殺し屋・みちたかくん(城田優)がケイたちを襲来してくるのも予告編で見ることができます。
 組長(佐藤二郎)が「問題は、そんなモンだい」と言って自分で笑っている場面もあり、アクションだけではなく、ゆるさも一緒にも楽しめそうです。
 ここからは妄想です。と言っても主人公の菊野ケイというゆるふわピンクボブという役を橋本環奈さんが演じただけでビジュアル的には大成功と言えそうで、ナイナイの岡村隆史さんも個性的なキャラクターになっており、しっかりと作り手の妄想を現実化していると感じられる作品になっている印象を受けます。
 ラストはケイたちがヤクザたちに勝利を収めるものの、テラノが金をそのまま持ち逃げしてしまうというラストではないでしょうか? ケイの恋は叶わないままですが、専門学校にテラノそっくりな人が先生としてやってくる。また恋が始まるみたいな終わりかもしれません。


VA_サブ1.jpg『バイオレンスアクション』
8月19日(金)より全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 浅井蓮次・沢田 新・小学館/『バイオレンスアクション』製作委員会

『NOPE/ノープ』(8月26日公開)
公式サイト:https://nope-movie.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=dCZ7zamCAa4

 人種差別や社会問題への辛辣なメッセージを絡めた作風で知られるジョーダン・ピール監督最新作『NOPE/ノープ』。物語の主人公が住むのはハリウッド唯一の黒人経営によるヘイワード牧場。「映画が生まれた頃から続く調教の歴史がウリ」とその家のエメラルド(キキ・パーマー)がCMか何の撮影で言っているシーンもあり、歴史の長い牧場のようです。
 ある日、停電し家の周り一帯が暗闇に包まれる。外にいた老人と馬のはるか前方に不思議な物体が明滅し、急に馬が走り出してしまうというシーンも予告編で見ることができます。その後、その一帯の住人たちは空を見上げた先に、「最悪の奇跡」がやってくるというシーンも予告編にあります。
 ここからは妄想です。まさに『未知との遭遇』のホラーバージョンと言えそうな予告編、住民たちが逃れることができない物体はUFOなのでしょう。人ではない何者かの拳と小さな人の拳がタッチしそうになる映像もあります。と考えると謎の物体に乗ってきた存在と人類はコンタクトすることになるはずです。
 ジョーダン・ピール監督となれば、彼らが人間たちと入れ替わって、そのフリをして生活をするという展開もありそうです。最後にはどんどん人間と入れ替わって、その数を増やした彼らの代表が大統領になり支配を始める、そんな皮肉なラストかもしれません。

『NOPE/ノープ』
8月26日(金)公開
配給:東宝東和


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」連載中です。

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