もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2022年3月号

『ナイトメア・アリー』(3月25日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』七回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、こんなご時世ですが映画館で観てもらえたらうれしいです。
3月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『MEMORIA メモリア』(3月4日公開)
公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/memoria/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=sUpRs09NJLk&t=2s

MEMORIA_メインPhoto_Credit_Sandro-Kopp©Kick-the-Machine-Films,-Burning,-Anna-Sanders-Films,-Match-Factory-Productions,-ZDF-Arte-and-Piano,-2021.jpg
 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督・脚本×オスカー女優のティルダ・スウィントン主演『MEMORIA メモリア』。ジェシカ(ティルダ・スウィントン)が向き合っている男性に「地球の核から鳴り響く轟音のような」と語っている。彼女はその鳴り響く轟音が頭の中で鳴ってしまう状況に陥ってしまい、その原因を解明しようといろんな場所を訪ねていくという物語のようです。考古学者からジェシカは6000年以上前の頭蓋骨を見せられ、それには穴が空いていた。学者からはその穴は「悪霊を追い出すため」に空けられたと説明されているのも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編ではトンネルなども出てきて、ジェシカに聞こえる音や彼女の頭と関係するような、イメージさせるようなものがいくつか出てきます。物語はなぜジェシカにその轟音が聞こえてくるのか、ということを解明するものでしょう。彼女の中で響く轟音は内なる記憶と結びついているはずです。
 それは6000年以上前の頭蓋骨同様に、太古の昔からずっと引き継がれてきた人類の記憶であり、それが彼女の外に出たがっているということかもしれません。ラストは彼女の頭が破裂して人類の記憶が飛び出して、もうひとつの世界が広がっていく。そんなSF的で衝撃的なものになっているかもしれません。

MEMORIA●サブ1.jpg3月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開
配給:ファインフィルムズ
©Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF/Arte and Piano, 2021.

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(3月11日公開)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/thebatman-movie/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=ImEaPpJhvrs

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 『ダークナイト』トリロジー以来となるバットマンの単独映画となる、マット・リーヴス監督×ロバート・パティンソン主演『THE BATMAN-ザ・バットマン-』。最狂の知能犯・リドラーが起こす連続殺人事件、その現場に残される挑戦状のような「なぞなぞ」は若きブルース・ウェインことバットマンに向けられているようです。
「世界は正義のフリして、誰もが"嘘"をついてるよ」「この世界に溢れる"嘘"はお見通し、次の標的はお前だよ」と告げるリドラー。ブルースにはその"嘘"を暴くために動き出すのでしょう。バットマンが白塗りの小悪党を容赦なく叩きのめすシーンなど、どこか成熟していないヒーローのようにも感じさせるシーンも予告編で見れます。
 ここからは妄想です。「嘘を暴け」ということが今作のテーマの一つのようです。バットマンは自身の正体を世間には隠しているはずなので、それも含まれるはずです。ならばリドラーはバットマンの正体を知っていると予想できます。リドラーはブルースに近い存在なのかもしれません。
 そして、バットマンの「正義」こそが嘘だという告発をリドラーがしようとしている可能性もあります。「正義」を行使するための暴力における責任をどうブルースが引き受けるかというラストシーンになるかもしれません。

rev-1-TBM-TRL-002_High_Res_JPEG.jpeg3月11日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

『猫は逃げた』(3月18日公開)
公式サイト:https://www.lr15-movie.com/nekowanigeta/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=S0Hq7Qouv9Y&t=2s

 今泉力哉監督×城定秀夫脚本による『猫は逃げた』。両監督が脚本を提供しあって、R15+のラブストーリーを制作するコラボレーションの一作(もう一作は2月公開で監督と脚本が入れ替わっている『愛なのに』)。
 漫画家の亜子と夫の広重夫婦は離婚間際、夫婦には共に新しい恋人がいるのも予告編で見ることができます。そんな男女四人がメインとなるかと思いきや、夫婦の飼い猫カンタが突如いなくなってしまう。夫婦は互いの婚姻関係を終わらせて、次に進もうとしたいのだが...。ふたりの揺れ動く気持ち、そして一緒に暮らしてきたカンタが見つからないことでうまく前に進めないようにも見えます。
 ここからは妄想です。「戻ってくるよ、きっと」「そうだね」という夫婦の会話を予告編で見ると、カンタ自体がふたりの一緒にいた時間の想いの結晶だったようにも思えます。そのカンタがいなくなったというのが、なによりも二人の関係がもう終わっている、ということなのでしょう。
 予告編にはカンタは河原でもう一匹の猫といるシーンがあります。その猫もどこかの誰かたちの想いの結晶だったかもしれません。猫≒愛だとするとタイトルは『愛は逃げた』になります。最後には互いに新しい生活を始めた元夫婦それぞれの元にカンタがひょいと顔を見せにやってくるかもしれません。

3月18日(土)より新宿武蔵野館他にて全国順次公開
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

『ナイトメア・アリー』(3月25日公開)
公式サイト:https://searchlightpictures.jp/movie/nightmare_alley.html
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=20zMHusx8VU&t=1s

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 ギレルモ・デル・トロ監督が傑作ノアール小説を映像化したサスペンス・スリラー映画『ナイトメア・アリー』。予告編の冒頭から見世物小屋の客引きによる語りが聞こえてきます。
「こいつは人間か獣か? この生き物は一流の科学者に人間と断定されました」というもので、見世物小屋に半獣半妖のような謎の不気味な生き物がいそうなこと、そして、それもあってか全体的に暗く怪しい雰囲気の世界観が提示されています。
 ショービジネスの世界で成功を目指す主人公のスタンが血を流しながら逃げている姿もあります。また、ヒロインらしき女性など魅力的な人物と見せ物小屋がどんなふうに関わってくるのか気になります。
 ここからは妄想です。と言っても過去にも映画されている作品なので、検索してしまえばネタバレしてしまう今作。
 予告編での客引きの男の話もあるので、ここはギレルモ・デル・トロ監督が以前に作った『シェイプ・オブ・ウォーター』に出てきた半魚人が登場し、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のようにデル・トロ監督のこれまでのキャラクターが一気に出てきたらおもしろいと思いませんか? MCUはヒーローたちのクロスオーバーですが、こちらはデル・トロ監督の作品に出てくるファンタジー世界のキャラクターたちが一堂に介する、そんなラストを見たいと思いました。

NA_サブ1_re.jpg3月25日(金) 全国公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
Ⓒ2021 20th Century Studios. All rights reserved.

(文/碇本学)

- Profile -
1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」連載中です。園子温監督が手がけられた映画『リアル鬼ごっこ』のノベライズ『リアル鬼ごっこJK』、Amazonプライムドラマ『東京ヴァンパイアホテル』エピソード8&9脚本を執筆しています。

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