もやもやレビュー

裕福なのに盗みに走った『アメリカン・アニマルズ』

アメリカン・アニマルズ [DVD]
『アメリカン・アニマルズ [DVD]』
エヴァン・ピーターズ,バリー・コーガン,ブレイク・ジェナー,ジャレッド・アブラハムソン,バート・レイトン
Happinet
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

今の生活のままだと、なにか物足りない。どうしようと考えた挙句、よく行く飲食店で、普段頼まないメニューをあえて注文してみる。ちょっとした刺激を味わう方法としては悪くない。でもそれでは刺激が満たされない。そんなときはどう出るか。

『アメリカン・アニマルズ』(2018年)ではお金に一切困っていない大学生4人が、刺激を求めて盗みに走る。2004年に米ケンタッキー州で起きた実話である。

彼らが狙いを定めたのは、大学図書館の特別室に貯蔵されている、巨大な鳥の画集。価値は1,200万ドル(約12億円)ほど。特別室には予約がないと入れないものの、部屋を見張るのは中年女性の図書館員(アン・ダウド)のみ。特別室のツアーに参加したスペンサー(バリー・コーガン)から、画集の話を聞きつけたウォーレン(エヴァン・ピーターズ)は、「ひとりの中年女性さえ押し退ければ宝にありつけるなんて、盗みに絶好のセッティングじゃん」と意見。ウォーレンの勢いにつられて、次第にスペンサーも乗り気になり、二人は計画を立て始める。中盤からは人員不足解消のため、優等生のエリック(ジャレッド・アブラハムソン)と大学生兼起業家のチャズ(ブレイク・ジェナー)をチームに加えて、当日挑むことに。強盗は計画通りに進むのか...?画面にはりつき、興奮気味で彼らを追ってしまう。

しかし、「こんなことしたらおもしろいだろうね。アハハ」で流れてもよさそうな話に、なぜここまで粘り強くしがみついたのか。強盗に挑んだ本人たちへのインタビューがところどころ挟まれる構成が、またおもしろい。そうして事件を振り返る本人たちの話を聞いているうちに、刺激を満たすのはせいぜい新たな食を試してみる程度で抑えておこう、と再確認するのである。

(文/鈴木未来)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム