もやもやレビュー

セザール賞を圧巻!『天国でまた会おう』

『天国でまた会おう』 TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中

「その女アレックス」の著者ピエール・ルメートルの傑作小説「天国でまた会おう」がついに映画化された。なんと、作者が共同脚本に加わっているではないか。そして、2018年セザール賞13部門ノミネート5部門受賞という本作。

もうすぐ戦争が終わるという時に上官の悪事により無駄な戦いが起こっていることに気がついたアルベール(アルベール・デュポンテル)は、上官により生き埋めにされてしまう。そんなアルベールを助けたエドゥアール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)だったがその時、顔に重傷を負ってしまう。なんとか命からがらパリに帰るも帰還兵に向けられるのは世間の冷たい視線だった。2人は国を相手に驚きの計画を企てる。最後まで展開が読めないようにうまく伏線をはりながら進行していくストーリーは、流石ピエール・ルメートルだ。

本作を映像化したことには3つの意味があったと思う。
まず1つめに戦争で負傷しその顔の傷を隠す為にエドゥアールはいつも仮面をつけているのだが、その仮面が本を読んで頭の中で想像していたものよりも美しく、繊細であり1つ1つの仮面のメッセージ性の強さを一層感じることが出来る。時にはおちゃめなエドゥワールの一面も垣間見られたり、仮面1つ1つにもこだわりを感じる。

2つめは、まるで絵画やアートを鑑賞しているかのように仮面を様々な角度から見ることができる。映画を鑑賞しているのに美術館で芸術品と出会った時のような気持ちにまでしてくれる。

最後になんといっても原作とは違うラストの展開だ。考えに考えぬいて書いたラストの展開だろうに、それを違うラストにするなんて...と思う人もいるかもしれない。
けれど、本当にみたかったラストを映像という形にしてくれたように感じた。そこに映画化した大きな意味があったと思うとともに、その監督の提案にOKをだした作者の心の寛大さにもほっこりする。

自分の気持ちを伝える方法はとにかく「言葉」にしなくてはいけないと思っていた。しかし、こんな方法もあったのだと芸術の偉大さを感じられた。大切な人に気持ちを伝える方法は1通りではない。そんなシンプルなことを忘れかけた私たちにそっとささやくように教えてくれる作品だ。

(文/杉本結)

***

『天国でまた会おう』
TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中

監督:アルベール・デュポンテル
脚本:アルベール・デュポンテル、ピエール・ルメートル
出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、アルベール・デュポンテル、ローラン・ラフィット、ニエル・アレストリュプ、エミリー・ドゥケンヌ ほか
配給:キノフィルムズ

2017/フランス/117分
公式サイト:http://tengoku-movie.com
(c) 2017 STADENN PROD. - MANCHESTER FILMS - GAUMONT - France 2 CINEMA (c)Jerome Prebois/ADCB Films

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム