終活の新しい教科書『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』
『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』 2月22日(金)より全国順次公開中
この題名になんともギョッとしてしまったのは私だけではないはず。そして最初に連想したのは『君の膵臓を食べたい』のような内容なのか...?ということ。
原作はエッセイ漫画で作者の宮川サトシが実際に体験した母親との日々を描いている。内容は母親への愛があふれており、AmazonレビューやSNSで話題沸騰し500万PVを記録している。
この映画の中で、いつかは自分の親も亡くなる日がくるんだと漠然とはわかっていても、その事実と向き合い考える日々は互いに苦しく辛いものなのだということがとてもリアルに描かれていた。
自分を産んでくれた母親という存在に劇中で「あの人は亡くならないと思った」という台詞に強く心打たれた。自分が病気や怪我をした時、悩みがあった時に一番近くで目を背けることなく向き合って支えてくれたのは後から思い出せばいつも母親だった。幼い頃はその存在の近さに感謝や愛情表現をうまく出来なかった時期もある。そんな時もいつでも自分の味方でいてくれたり愛情をもって育ててくれたのはやっぱり母親だろう。
「親の死には意味があり、親の死が子供にエネルギーを与える」という言葉の重みに終盤は自身の両親の死について考えるだけではなく、自分自身にもいつか訪れる「死」もまた、我が子にとってプラスとなるエネルギーに変換されるのだろうか?そうなれるようにこれからの日々を生きていかなくてはいけないなと教えてもらったような気持ちになった。
「死は悲しく辛いだけのものではない」とよく言うけれど、その言葉の意味を深く力強く伝え感じとらせてくれる作品だった。
終活を考えるということは、見送られる人間だけではなく見送る人間にも必要なことだと新しい角度から考えられる作品だ。
(文/杉本結)
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『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』
2月22日(金)より全国順次公開中
監督:大森立嗣
原作:「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った」(宮川サトシ著/新潮社刊)
出演:安田顕、松下奈緒、村上淳、石橋蓮司、倍賞美津子 ほか
配給:アスミック・エース
2019/日本映画/108分
公式サイト:http://bokuiko-movie.asmik-ace.co.jp
(c)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会