もやもやレビュー

ヴェネチア国際映画祭主演女優賞受賞『ともしび』

映画をたくさん観ていると多くの作品の中に大声で笑ったり、大声で泣いたり、時には怒り狂って殴り合うようなシーンがあったりする。冷静に考えると、どのシーンも私たちの日常生活の中にあるようでないのではないだろうか?
特に日本人は感情を表に出して爆発させることをどこか恥ずかしがったり、他国に比べて感情表現が少し控えめなのかもしれない。

本作では、平穏な日々を暮らしていた夫婦が、なにかの罪で旦那が服役することになる。そこからどんどんと人生の歯車が狂ってゆく、一人の初老の女性アンナの物語である。

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アンナを演じたシャーロット・ランプリングの演技力があったからこそ、描けたと言っても過言ではないだろう。それくらい彼女の多様な表現力に魅了される。台詞は必要最低限までそぎ落とされている。食事をしているシーンで会話はなく予期せぬハプニングに対してもなんの反応もない。こんなに冷めきった夫婦の物語をこれからみるのかと思った矢先に、旦那のマッサージをアンナがする。触りたくないほどに冷めきってはいないのか。この夫婦の距離感になにか違和感を持ちながら物語は進んでいく。
多くは語られないことで、どこかミステリー映画をみているような感覚をもちアンナの一挙一動が見逃せない。

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どんなに大切に日々を積み重ねていっても一つの出来事で何もかもを失うことがあるのだとしたら、そこからまた新しい日々を積み重ねることは出来るのだろうか? 若ければ答えは「YES」だろう。でも、アンナは初老であると考えるとあとほんの少しの残された大切な時間なんだと推察される。原題は「Hannah」であるが邦題の「ともしび」は最高にこの映画のことを考えてつけられていると思う。
ヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞した本作でのシャーロット・ランプリングという大女優の内面からあふれ出す感情表現は一見の価値がある。

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『ともしび』
2月2日(土)よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開中

監督・脚本:アンドレアパラオロ
出演:シャーロット・ランプリング、アンドレ・ウィルム ほか
配給:彩プロ

原題:Hannah
2017/フランス・イタリア・ベルギー/93分
公式サイト:http://tomoshibi.ayapro.ne.jp
(c)Partner Media Investment - Left Field Ventures - Good Fortune Films

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