もやもやレビュー

子育ての普通をぶっ壊すロードムービー『はじまりへの旅』

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我が家の愚息は、放っておいても、放っておかなくても、ラジオのように喋り続ける。とくに質問攻めになると、手がつけられない。図鑑に回答がある場合はいいけれど、心理的なことや哲学になると、これがまた難しい。なんで、なんで、なんで......。

取り繕うように答えたあとで「もっとこうやって説明すればよかったかなぁ」なんて思うこともある。世の中には一筋縄ではいかないことも多いし、自由なことは楽しいけれど、倫理だって無視できないからだ。

『はじまりへの旅』は、2016年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門で監督賞を受賞した作品で、ある一家のロードムービーである。ヴィゴ・モーテンセン演じる主人公のベンは7歳から18歳までの3男3女の父親。
彼らのへんてこぶりは常識を逸脱していて、刺激が強い。社会との接触を絶った森深くで、自給自足の暮らし。昼は厳しいトレーニングで精神と戦闘能力(!)を鍛え、夜は哲学や歴史、経済書を各自で読み込むという、究極の英才教育を施している。

そんななか、入院していたベンの妻がなくなってしまう。弔いの方法で父親と揉めたベンが、子ども達を引き連れ、葬儀に乗り込むことに決める。はじめて森を出た子ども達は一体なにを感じるのか......。ベンはヒッピーとは一線を画すし、決して犯罪者でもない。正しい教育、子育ての正解って何だっけ? と考えさせられることは間違いない。
目がセクシーなヴィゴ・モーテンセンは、入魂!の役づくりに定評がある。ロード・オブ・ザ・リングのアラゴルンといえばわかるだろうか。先ほど開催されたアカデミー賞では、『グリーンブック』で主演男優賞にノミネート。当作品では20kgの増量で挑んだというから、これもまたすごい。

(文/峰典子)

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