もやもやレビュー

ドラッグに溺れる生活に、ポツリと浮かぶ愛『神様なんかくそくらえ』

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ジョシュ・サフディ監督が本作のヒロインであるアリエル・ホームズを見つけたのは、ニューヨークの道端だった。それも、べつの映画のキャスティングのためにNYのダイヤモンド・ディストリクトをうろうろしていたときのこと。場所が場所なので、てっきり近辺で働く女性だと思い込んでいたジョシュ。ところが、スカウトしたアリエルに映画の詳細を告げようと再会を果たすと、アリエルはくたびれた服装をまとって現れたそう。じつは、彼女は帰る家族がいない、薬物中毒のホームレスだったのである。それを知ったジョシュは彼女のために仕事を探してくるなど、以後彼女の生活を少しずつサポートするようになり、だんだんと彼女の人生に惹かれていくことに。そしてとうとう「君の人生について書いてくれないか。もちろん報酬は払う」と持ち掛けたのである。できあがったのは、アリエルがアップルストアに通い詰めて書いた160ページの実体験。そうしてアリエル自身を主人公とし、彼女のストーリーを映画化したのがこの『神様なんかくそくらえ』(2014)なのである。

本作はサフディ兄弟特有のダークさが染み渡っているし、決して軽い気持ちで観られる映画じゃない。だから、というわけではないけれど、好きなキャラクターもパッとは思い浮かばない。なんせヒヤヒヤするサントラと共に淡々と映し出されていくのは、うつろな目をしたハーリー(アリエル・ホームズ)と彼女を取り巻くうつろな目をした仲間達がコカインを追う姿。言ってしまえばそれだけ。さらにアリエルは、どうしようもないダメ男でコカイン中毒者のボーイフレンド、イリヤ(ケイレブ・ランドリー)に強く惹かれている。どこをとっても救いようがない。それでも鑑賞後どうしてもあとを引くのは、きょうから明日へと酩酊状態で移り行く生活の中でも、イリヤを愛することにわずかな幸せと希望を見出すアリエルの姿のような気がする。そこにはかすかな純粋さというか、人間くささが垣間見えるのだ。

本作についてジョシュ・サフディ監督は「彼らの生い立ちには興味がない。興味があるのは、彼らのいまの姿だ」と言っていたけれど、たしかにそれだけで十分な気がした。

(文/鈴木未来)

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