もやもやレビュー

どこまでも答えの見つからないミステリーほど面白い物はない『愚行録』

なにをいってもネタバレになりかねない。人にオススメしたくてもミステリーの紹介ってむずかしい。

閑静な住宅街で突然起こった一家惨殺事件。被害者は、エリートサラリーマン田向弘樹(小出恵介)とその上品な妻、友季恵と娘の3人家族。近所の評判も良く、殺された理由も全くわからずに未解決のまま1年が過ぎていた。その時、記者の田中武志(妻夫木聡)は風化しつつあるこの事件を再び追うことにする。2人の友人や知人、関係者の意見を聞けば聞くほどどこにでもありそうでリアルな下世話な真実が次々とあふれ出してくる。

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主人公の記者・田中武志を妻夫木聡が演じる。

この人もこの人も怪しい。登場人物全員がなにかしら抱えて生きている。出会った人になにかしらの感情を抱きそれを吐露することはごく自然なことだが、田中に聞かれて答える田向夫妻に関するエピソードの数々がどこか不自然なようにもみえる。

事件を追う田中もまた、育児放棄で捕まっている妹光子(満島ひかり)という存在に頭を悩ませていた。そんな影を背負いながらも事件を追い続ける田中。
「一家を皆殺しにするほどの殺意をもっているのは誰なんだろう?」と犯人を予測したくてもなかなかたどり着かない真実の裏に何十にも隠された本当の真実にたどり着いたときにはエンドロールだった。

田中が抱える家族の問題を妻夫木聡は田中のもつ根深い闇を雰囲気で醸し出している。多くは語らないというよりは、まるでつらい過去は語ることが出来ないとでもいっているようだった。
つかみどころのない妹・光子を演じた満島ひかりの演技は目線など細部にわたるまで繊細ではかなく、触ったら壊れてしまいそうなほど不安定な女性。

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妹・光子を演じる満島ひかり

この作品を通して、やっぱり人はどこか愚かで滑稽だけど、愛されたくて誰かに自分を見て欲しいのだと感じた。ただ、大人になるにつれてやっかいなしがらみや感情の表現方法が増えていってしまったがゆえに、糸が絡み合ってほどけなくなっていく。
絡まり合う糸がほどけた先に待つ真実に、驚愕すること間違いなし!

(文/杉本結)

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『愚行録』
2月18日(土)より公開

監督:石川慶
原作:貫井徳郎『愚行録』
出演:妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、白田あさ美、市川由衣
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野

2017年/日本映画/120分
公式サイト:http://gukoroku.jp
©2017『愚行録』製作委員会

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