もやもやレビュー

本当に大切なものと向き合うということ。『沈黙−サイレンス−』

映画『沈黙−サイレンス−』は、 1月21日(土)公開です!

2016年は小説『沈黙』が刊行されてからなんと50年、作者の遠藤周作の没後20年という年だった。マーティン・スコセッシ監督は28年前に本書に出会い、映画化を決意し生前の遠藤周作本人にも会っていたというから驚きだ。そして、刊行から半世紀の年月を経て、現在も世界中で読まれている世界的ベストセラーだ。

やっとこの作品が映像化される時がきた。何年も前から日本人キャストの選定をしていたスコセッシ監督。自分の信じるものを否定される苦しみや悲しみをかかえる人間の代表として描かれるキチジロー役の選定にはとても時間がかかった様子だ。窪塚洋介が初めてキチジローのオーディションを受けたのは7年前。その時はすべてをだしきれなかったようだが、その2年後まだ決まっていなかったキチジローのオーディションで、再び窪塚洋介にチャンスが舞い込んだ。オーディションビデオをみた監督に呼ばれ、監督の滞在先のホテルで窪塚はキチジローを演じた。その姿を見て監督はこの人こそ「キチジロー」だと確信したという。

原作で描かれるキチジローの姿から、窪塚洋介なりのキチジローへとうまく変換されたその演技。
監督がいう「言葉では表現できない、そんなものを作りたい」という言葉におおいに貢献した役者の一人であることは間違いない。
長い時間をかけて様々な思考と向き合い完成したキチジローは大画面で観て欲しい。


鎖国中の日本へ布教活動をしにいった師が棄教したと聞きつけた2人の司祭は、真実を確かめるためにポルトガルから長崎へと足を踏み入れる。そこでみた光景は想像を絶する日本だった。
この中に出てくる拷問の数々はとてもみてはいられないほどに痛々しい。そして、どの拷問もじわじわと長い時間をかけて体力、気力を奪ってゆく。
その拷問を受けながらもキリスト教徒達は神を信じ神に祈る。それでもだれも助けてなどくれないという現実が突きつけられる。隠れキリシタンとして生きる信者は踏み絵を強要される。信仰を貫き命を捨てるのか? 棄教して命を守るのか? 究極の選択を迫られる。

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「あなたは神を信じますか?」
そんな台詞をどこかで耳にしたことがある人も多いだろう。
私はぼんやりとその言葉を思い出しながらこの作品を鑑賞した。
このとき日本人はなぜ切支丹(キリシタン)にここまで強く反発し、遠ざけたのだろうか?
もちろん鎖国という大きな背景がある。
そしてもう一つこの作品の中に登場するこの言葉が教えてくれた。

「日本人は自然の中にしか神をみつけられない」

そう、私たち日本人は古くから五穀豊穣を祈り自然の中に神をみいだしていたのだ。
私たちの身近に存在する神社は八百万の神を奉りその神々に私たちは祈っている。現代も多くの人が神社へ足を運ぶ機会はあり、「お宮参り」などの風習として残っている。

この作品を通じて、一人ひとりの人間がどこに神という存在を見つけるのかが大きなテーマとなっている。
信仰のある人と無宗教の人、または人種によって本作の与える影響は大きく異なるであろう。
決して楽しい物語ではないけれど『沈黙―サイレンスー』が信仰の自由が当たり前になっている現代に映像化されることの意義を、作品を鑑賞して一人でも多くの人に考えてほしいと願うばかりだ。

(文/杉本結)

***

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『沈黙−サイレンス−』
1月21日(土)公開!

監督:マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、キアラン・は院主、リーアム・ニーソン、窪塚洋介 ほか
原作:遠藤周作『沈黙』
原題:Silence
配給:KADOKAWA

2016/アメリカ/162分
公式サイト:http://chinmoku.jp

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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