もやもやレビュー

『家族ゲーム』に出てくる横並びの食卓から、思ったことを口に出しやすい空気をつくる

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 松田優作演じる家庭教師がやって来たことで一家に巻き起こる騒動を描いた傑作ホーム・コメディ。『の・ようなもの』で知られる森田芳光監督が、家庭の抱える問題をシュールなタッチでユーモラスに描きます。

 1980年代、ウォーターフロントに倉庫や工場群、団地など無機質な印象を抱かせる東京湾岸の街が舞台です。中学3年生の沼田茂之は高校受験を控え、父や母、兄まで家中がピリピリ。出来のいい兄と違って、茂之は成績も悪く、何人もの家庭教師がすぐに辞めていました。そこへ新たな家庭教師としてやってきたのが、三流大学の7年生である吉本という風変わりな男。暴力的な吉本は茂之に勉強ばかりか、喧嘩の仕方も教えます。茂之は幼馴染みで同級生の土屋にいつもいじめられていましたが、殴り方を習っていた甲斐があり、ついにやりかえすことに成功。そして茂之の成績もどんどん上がっていくのですが......。

 この作品に度々出てくる、横並びの食卓の様子が上映時は話題を呼び、印象に残っている人も多いかもしれません。序盤で初めて吉本が家族と食事をするシーンでは、吉本に向かって父と母が次のように話しかけます。
父「大学では女の子にモテるかね?」
母「顔はいいですもんね」
父「顔?......いいかね?」
吉本「顔はいいですよ僕は」
と、なんとも初対面とは思えないような会話をしているんです!

 横並びの食卓は正面から向かい合うことがない、コミュニケーションの不足を象徴していると当時はよく言われていたそう。ですが少し見方を変えると、横並びの席配置は「まだ打ち解けていない相手とも何でも言い合える空気」を生み出すのではないでしょうか。初対面の取引先との食事はテーブル席ではなくカウンター席を、好意を寄せる異性との初デートはドライブで助手席に座って。そうすれば思っていることをすぐ口に出せて、相手との距離も縮まることかと。ただ、調子に乗り過ぎて失礼な発言をしてしまわないよう、ご注意を。

(文/栗山 遼)

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