もやもやレビュー

手料理で季節を巡る、ほろ苦いニート映画『もらとりあむタマ子』

映画『もらとりあむタマ子』 新宿武蔵野館ほかにて公開中!

 大学時代からの盟友であり、『リンダ リンダ リンダ』や『マイ・バック・ページ』などでタッグを組んだ、山下敦弘監督×向井康介脚本の最新作。音楽チャンネル「MUSIC ON! TV」のステーションIDとして放送されていたものを長編映画化したもので、主演は山下監督の『苦役列車』にも出演した前田敦子さんが務めています。

 描かれるのは、お父さんと2人暮らし、大卒23歳無職のタマ子の春夏秋冬。その日常には、特別なことは何も起きませんが、そんななかですごく気になるのが、料理上手のお父さんが作るごはんです。

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料理上手のお父さん役は、山下監督作ではお馴染みの康すおんさん。

 ロールキャベツ(あっちゃんがすごい大口で頬張る様がブサかわいいです)、秋刀魚の塩焼きと炊き込みご飯、ザ・家庭のカレー、昆布と鰹できっちりダシをとった年越しそば。どれもこれも、めちゃくちゃ美味しそう。そんな手料理と共に季節を巡りながら、初めは悪態ばかりついていたタマ子が、買い出しに出かけたり、家のカレンダーを取り替えたりと、ちょっとずつ活動を始めます。

 やがて小さな挑戦を始めたタマ子。お父さんが作った山菜の天ぷらには手をつけず、タッパーの温野菜と青汁でダイエット。ちょっとずつ巣立とうとしているタマ子の心が、食べ物の変化を通して描かれます。成長してるけど、それが嬉しいような寂しいような。なんかだんだん、タマ子はうちの子感覚になってきます。そして2人で食べる最後の料理は、ゴーヤチャンプルーでした。ゴーヤの苦みが、2人の間に流れるほろ苦くも幸せな時間と重なります。

 美味しい手料理と、あったかな家に家族がいれば、それだけで十分に幸せだったんだなぁ。でもそれは、ずっと続くものじゃないんだなぁ。いつもまでもこの何も起きない日常に浸っていたくなる、そんな映画です。

(文/根本美保子)

『もらとりあむタマ子』
新宿武蔵野館ほかにて公開中!

監督:山下敦弘
出演:前田敦子、康すおん、伊東清矢ほか
配給:ビターズ・エンド
2013/日本/78分
http://www.bitters.co.jp/tamako/

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