9連休の大晦日、パリに行きたくなった。『パリ空港の人々』
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久しぶりにきれいな夜景を見ました。映画ですが。
舞台はパリ。図像学者のアルチェロは、カナダのモントリオール空港で寝ている間に、パスポートを始め、貴重品や靴までも盗まれてしまいます。そのまま目的地のシャルル・ド・ゴール空港まで行きますが空港で足止めさせられます。大晦日目前という状況に加え、フランスとカナダの二重国籍な上、イタリア在住で、スペイン人の妻がいるという複雑な人物。確認がとれるまでトランジット・ゾーン(外国人用処理区域)に留まることに。
トランジット・ゾーンには、理由あってそこで生活している人々がいました。中でも、ゾラというアフリカの少年は、一週間以上も入国が認められず、父親の迎えを待っています。そんなゾラから話しかけられたことをきっかけに、アルチェロはとりあえずの寝床や食を確保でき、トランジット・ゾーンで暮らす人たちと交流を持つことになります。
そんな折、ゾラの父親は、実は技術者ではなく道路掃除婦で、不法滞在就労で強制送還されたという事実が発覚します。アルチェロは、ショックを受けるゾラのために、パリの街並みを見たいという少年の願いを叶えてあげます。大晦日の夜、こっそり皆で空港から抜け出して、パリの街並みを観に出かけます。
その景色のきれいさといったらなんの! 事情があって空港から外に出ることができない彼らの目に映るつかの間のパリの夜景。特に少年ゾラにおいては、夢に見たパリでしたが、父親の一件により、信じていたものに裏切られたショックと、この先の不安で心細い彼の心情を想うと、夜景の美しさの分だけ切なくなりました。
同じ景色でも、複雑な想いの分だけ、哀愁を帯びてより輝いて見えるんだと思いました。自分が20代の頃に訪れたパリで、いない相手で妄想をし、いつか新婚旅行で...と思いながら眺めた景色とは雲泥の差です。暮れの9連休に向けて今から予約と相手を確保するには遅すぎでしょうか。あきらめきれずに本作をリピートしまくる予定です。
(文/森山梓)