僕と彼女のシンクロニシティ。『ゼロ・グラビティ』
映画『ゼロ・グラビティ』 が全国公開中です!
思いがけない事故により、宇宙空間にたった独り放り出されてしまった女性宇宙飛行士の、緊迫のサバイバルを描いたスペース・サスペンス・エンターテイメント映画『ゼロ・グラビティ』。ほとんどサンドラ・ブロックのひとり芝居(ほかはジョージ・クルーニーと、声と、死体)。しかも宇宙服を着ている時のサンドラ・ブロックは、ほぼ顔のみの演技だし、舞台は美しい地球以外はほとんど漆黒かつ無音の宇宙空間。要素だけ見ると、ストイックすぎ!なのに、91分間、ずっと目は釘付け。息苦しくて、心臓がドキドキして......とにかく没入感がハンパないのです!!
その没入感の理由は、3Dでの立体表現による臨場感というのもありますが、ゲームでいうFPS(ファーストパーソン・シューター)的な1人称視点が素敵に使われていることも大きいと思われます。
特に、超爆音のオープニングから一気に無音の宇宙世界へと切り替わったあとの(この緩急もヤバイ)冒頭シーン。アルフォンソ・キュアロン監督は『トゥモロー・ワールド』の6分超の長回しによる名シーンが有名ですが、『ゼロ・グラビティ』の冒頭シーンはなんと約13分もの長回しだそうです。現実と同じ切れ目のないシーンは、宇宙にいるかのような臨場感をバリバリに発揮。で、そのシーンの最後、サンドラ演じる主人公ライアンの宇宙服の内側にカメラが滑り込み、三人称から一人称視点にピタッとハマる。その一連の流れは、もう惚れ惚れするような職人芸です。そして、脳内もここで一気に、ライアンとシンクロ! この瞬間から、映画というより、体験とかアトラクションに近い、そんな時間が流れていきます。
そういえばシュワちゃん主演のSF映画『トータル・リコール』(1990年)では、記憶を書き換える装置で火星旅行を疑似体験してとんでもない展開になりましたが、『ゼロ・グラビティ』はまさに今の時代にできる、最高峰の、宇宙旅行疑似体験装置じゃないでしょうか。このリアルな疑似体験は、たぶんいつか本物の記憶とすげ変わってしまうかも知れません。そのうち死ぬ時がきたら、記憶の断片として走馬燈の中に現れるんじゃないかと思います。
絶望の淵から這い上がるひとりの女性を描いたストーリーは極めてシンプルですが、その映像は言葉以上のことを語ります。映画にしかできない、しかも3Dでしかできない表現が詰まってます。これは絶対、映画館で観るべき。
(文/根本美保子)
『ゼロ・グラビティ』
全国ロードショー中<3D/2D同時公開>!
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2013/アメリカ/英語/91分
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