もやもやレビュー

未来が止まって見える日に 『ザ・フューチャー』

ザ・フューチャー [DVD]
『ザ・フューチャー [DVD]』
ハミッシュ・リンクレイター,デヴィット・ウォーショフスキー,ジョー・バターリック,ミランダ・ジュライ
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不安になる午後がある。部屋を片づけて、メールだって返して、急ぎの仕事はないはずで、読みかけの本を読むはずだったのに、気づけばベッドに沈んだまま、ずっと何もしていなかった、みたいな午後。例によって冷蔵庫の中身も空っぽ。そんなわたしをひたひたと、しみしみとさせてくれるような映画が観たい。

そんな午後にふと思い出したのが、ミランダ・ジュライの映画『ザ・フューチャー』。2011年の作品で、監督・脚本・主演すべてをジュライ自身が手がけている。静かで、少し奇妙で、やさしい映画だ。

物語はロサンゼルスに暮らすカップル、ソフィーとジェイソンが、病気の野良猫・パウパウを引き取ることをきっかけに始まる。「あと30日で猫がやって来る」と知ったふたりは、「これが最後の自由な時間かもしれない」と思い込み、それぞれのやり残していたことに取り組もうとする。しかし戸惑い、少しずつすれ違っていく二人。やがてソフィーは、見知らぬ男との奇妙な関係にのめりこみ、ジェイソンは、時を止める(!)という突拍子もない行動に出る。

語り手は、新入りの猫のパウパウだ。毛布の中で動けないその猫は、不安な気持ちをつぶやき続ける。自分が飼い主に選ばれるまでの、長くて孤独な時間。どこかで、私たちの心の声のようにも聞こえてくる。未来がどこか遠くにあって、今を持て余してしまうような日。焦りとあきらめが同居して、動けないでいるとき。その「動けなさ」に、ちゃーんと名前をつけて、物語にしてくれている。助かる。

突飛で曖昧で、何が起きているのか掴みにくい。派手な展開も、明確な答えもない。けれど、ふたりの選択や迷いのひとつひとつが、なぜか他人事には思えない。自分の中の「止まってしまった時間」をそっと受け入れてくれるような、不思議なぬくもりのある映画。もし今日が、なんとなく動けない日だったとしても、それはそれでいいのかもしれないなぁ。そう思わせてくれるだけで、この作品と再会した意味があった気がする。

(文/峰典子)

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