もやもやレビュー

大事なこどもを傷つけたら、タダじゃおかないんだから!『シリアル・ママ』

シリアル・ママ [DVD]
『シリアル・ママ [DVD]』
ジョン・ウォーターズ,キャスリーン・ターナー,サム・ウォーターストーン,ミンク・ストール,リッキー・レイク
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なにか落ち込むことや困りごとを親に話すと、「あらそうなのね。それでさ」とあっという間に話題がすり替わっていることがよくある。もう少し気にかけてくれよな!とも思うが、気にかけられすぎると、それはそれでとっても大変なのである。

たとえば『シリアル・ママ』(1994)の主人公ママ、べバリー(キャスリーン・ターナー)の場合。彼女は一見普通の2児の母だが、大事な子供たちを少しでも困らせたり、傷つけたりしたら、タダじゃおかない。面談で教師が息子のことを問題視したら? 即退治! 娘とのデートをすっぽかし、ほかの子と呑気にデートしてるやつを見つけたら? 即退治! ちなみに退治とは注意するとか平手打ちするとかそんなかわいいものではない。なんの前触れもなく、殺してしまうのだ。だって彼女はシリアルキラー(連続殺人犯)、通称、シリアル・ママ!

子供以外のことでもママは退治に出る。たとえば歯科医である旦那とのバードウォッチングの日に、診察を無理にお願いした後、あま〜いケーキをもぐもぐ食べ、歯をまるで大事にしていない患者の姿を目撃したら......こりゃもう即退治案件だ。そうしてニュースで事件が話題になりだすと、犯人と疑われるママは不思議なことにちょっとした人気者に。警察に追われてライブハウスに逃げ込むママには、まさかの「シリアルママ!」コールが響き渡り、法廷の前ではそれにのって、子供たちがママTシャツを売りさばいている。そして計7名を殺害したママは、無実に......!なぜ!?どうやって!?はぜひ本編よりどうぞ。

終始コメディ調なのでおかしな話だな!と笑い飛ばしたくもなるが、よくよく考えてみると、O・J・シンプソンの例なんかとそうかけ離れてもいないように思えてくる(シンプソンは元妻とその友人の殺人事件で起訴されるも、刑事裁判では無実となった)。それこそシンプソンのTシャツは今でも元気に(?)販売されており、そこには「NOT GUILTY(無実)」「FREE OJ(OJを釈放せよ)」などの言葉がでかでかと書かれている。実際に監督のジョン・ウォーターズは、とんでもない悪さをしたかもしれない人が、ある種セレブのように人気を集めてしまう現象を注視していたという。さらにはこういう事件に便乗してグッズなどを売り、お金を儲けたがるのは資本主義の極みだとも話している。

ちなみに、作中にはカーチェイスのシーンがあるため、O・J・シンプソン事件をほのかに思い出すが、映画は事件前に撮影を終えていた。制作陣はテレビで報道を見て、びっくり仰天したそうだ。

(文/鈴木未来)

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