「透明人間」として恋をした双子の物語『ニューヨーク・オールド・アパートメント』

- 『ニューヨーク・オールド・アパートメント(字幕版)』
- マーク・ウィルキンス,ラニ=レイン・フェルタム,マガリ・ソリエル,アドリアーノ・デュラン,マルチェロ・デュラン,タラ・サラー,サイモン・ケザー

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現在、約1100万人もの不法移民が暮らしていると推定されるアメリカ。トランプ政権では「国境を越えた者は犯罪者」という考えが示されるなど、移民問題は日々激しく議論されています。映画の中で描かれるアメリカはしばしば「自由の国」や「アメリカン・ドリーム」としてきらめいて見えますが、その一方で、国境を越えてきた不法移民たちは常に国外追放の恐怖を抱え、息をひそめ"透明人間"として生きるしかない現実があります。そんな過酷な状況の中でも「恋をしよう」ともがく双子の青年たちを描いたのが、『ニューヨーク・オールド・アパートメント』。メガホンをとったのは、短編映画『ボン・ヴォヤージュ』でアカデミー賞ノミネートを果たしたマーク・ウィルキンス監督。
物語の舞台はニューヨーク。ペルーから国境を越えてやって来たデュラン一家は、不法滞在者として大都会の片隅で暮らしています。双子の兄弟、ポールとティトは語学学校に通いながら配達の仕事をして家計を支えていましたが、仕事中に車に轢かれても、その場から逃げるしかない。捕まれば国外追放になってしまう彼らは、自分たちを"透明人間"と呼び、街の喧騒に紛れて息をひそめて生きています。一方、母のラファエラはウェイトレスとして働きながら二人の息子を育てていますが、ある日、客としてやってきた裕福な白人男性に声をかけられ、交際に発展。さらにその男性から「ブリトーショップの開業」という夢のような話も持ち掛けられます。そんな中、ポールとティトは語学学校で出会った美女クリスティンに恋心を抱くようになります。しかし、恋をするという当たり前のことさえ、不法移民の彼らにとっては大きなリスクと葛藤を伴うもので......。
NYという大都会で、普通の青年らしく誰かを好きになることが、いかに困難なのか。
それでも少しでも幸せになろうともがく双子を演じたのは、ペルー国内の大規模オーディションで抜擢されたアドリアーノ・デュランとマルセロ・デュラン兄弟です。彼らのピュアで切ない表情は人を惹きこむ力があり、誰もが彼らの幸せを願いたくなることでしょう。本作は、ニューヨークの華やかな面だけでなく、その陰に息をひそめて生きる人々のリアルな姿を、美しい映像とともに描き出した一本です。
(文/トキエス)

