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ディズニーの魔法がASDの少年の言葉を取り戻す『ぼくと魔法の言葉たち』

ぼくと魔法の言葉たち(字幕版)
『ぼくと魔法の言葉たち(字幕版)』
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コミュニケーションがうまく取れない、人との関わりが苦手などの特性がある障がいASD(自閉症スペクトラム)。近年はNetflixなどでASDをテーマにした作品やASDのキャラクターが登場する作品が配信され、この障がいについて理解を深める人が多くなったのではないかと思います。今回は、ASDの少年がディズニー映画を通じて再び言葉を取り戻していく姿を描いた心温まるドキュメンタリー『ぼくと魔法の言葉たち』をご紹介。監督は、アカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞したロジャー・ロス・ウィリアムズ。本作は、ロン・サスカインドの著書『ディズニー・セラピー 自閉症のわが子が教えてくれたこと』を原作に映画化されました。

ロス・サスカインドの次男であるオーウェン。2歳のときに言葉を失い、周囲とのコミュニケーションが極端に難しくなってしまいます。しかしあるとき、父ロンはオーウェンの口から出る意味不明な言葉が、実は映画『リトル・マーメイド』でアースラが放ったセリフだと気づきます。ロンはまた、オーウェンの好きなキャラクター、イアーゴ(『アラジン』)のぬいぐるみを手に話しかけると、なんとオーウェンから返答が。5年ぶりに会話をしたことに感激した家族は、ディズニー映画のキャラクターを橋渡しに、オーウェンとの絆を取り戻していきます。

ディズニー映画には、人をときめかせ、勇気を与えてくれる魔法があります。しかし、現実はディズニー映画の中で映し出されるものだけではありません。オーウェンが23歳になり、恋人ができたことで、兄は弟オーウェンの恋の行方を心配します。「キス以上の行為」など、ディズニー映画では描かれない現実で起こることにどう対処すればいいのか。「失恋」や「別れ」という現実に、オーウェンはどう向き合うのか。それはオーウェンだけでなく、家族にとっても試練でした。どう支えればいいのか、どう見守ればいいのか......手探りで悩みながらも、ただ一心にオーウェンの幸せを願い続ける家族の姿に涙が止まりませんでした。ちなみに本作ではディズニーが全面協力しており、ディズニーの映像もところどころ使われているのがポイント。また、日本公開時には「フレンドリー上映」という、日本の映画館では初めての試みも実施されました。席を立ってもいいし、声を出してもいい。障がい者や小さな子どもたちも一緒に気兼ねなく楽しめる内容となっていたそう。こうした作品や取り組みが広がることで、もっと多くの人がASDや障がいについて理解を深めていけたら。そう感じさせてくれる、あたたかい一本です。

(文/トキエス)

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