もやもやレビュー

映像と音楽が奏でる人間賛歌。『人生は小説より奇なり』

人生は小説よりも奇なり [DVD]
『人生は小説よりも奇なり [DVD]』
ジョン・リスゴー,アルフレッド・モリナ,マリサ・トメイ,ダーレン・バロウズ,アイラ・サックス
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本作は、2014年公開のフランス・アメリカ合作映画。監督は、『あぁ、結婚生活』のアイラ・サックス。監督は、ゲイであることを公表しており、作中に登場する絵は、同性婚をした10歳年下の画家が描いたものだそうです。

ニューヨークのマンハッタンに暮らす画家のベン(ジョン・リスゴー)と、音楽教師のジョージ(アルフレッド・モリーナ)は、39年間連れ添ってきた熟年同性カップルです。
2011年にニューヨーク州で同性婚が合法化され、周囲の祝福の中で結婚します。
幸せの結婚生活が始まると思いきや、ジョージが同性婚を理由にカトリックの学校の音楽教師をクビになります。ローンも払えず、やむなく長年住み慣れたアパートから立ち退くことに...。ベンは甥の家に、ジョージは元隣人のゲイ・カップルの部屋に、それぞれ居候することになります。

とりあえずの住処が見つかったものの、やはり他人との同居はお互いに息苦しいことも多く...。ベンの寝床は甥の息子の部屋の二段ベッドの下段だし、自宅で仕事をする甥の妻に気を遣うも微妙な空気。ジョージの方も、毎晩パーティーが開かれ、寝床のソファーも座れるどころか帰宅しても居場所すらありませんでした。
居候という肩身が狭く、何事も遠慮がちになる様子がとても痛々しかったです。また、39年もの長い間一緒にいた二人が離れ離れになる辛さも描かれていました。

ジョージが居候の境遇に耐え切れず、雨の中、エリオットの家にやって来て、ベンに会うやいなや泣き出してしまいます。会えない辛さや置かれる境遇のストレスで、たまったものがあふれ出てしまったジョージを、ベンは優しく抱きしめてあげます。
同性愛だからどうとかではなく、人と人とが互いを必要とし愛し合うのに、性別は関係ないのだなと心底思わされました。
 
また、結婚、失業、怪我、死別など、長い人生における悲喜こもごもが描かれており、ショパン、ベートーベン、ヴィエニャフスキといったクラシックの名曲の数々がベン達の人生を彩ります。映像の美しさと共に必見です。

(文/森山梓)

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