ベタな作品ながら異様なレベルの金遣い『ペガサス 飛馳人生』
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- シェン・トン,ホアン・ジンユー,イン・ジョン,チャン・ベンユー,ウィンストン・チャオ,ウィリアム・フォン,ハン・ハン
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登場人物が全員悪人も珍しくない香港映画と異なり本土の本作は全員びっくりするほどの善人揃い。不快感はないが強烈な印象もない。本作だけ視聴する分には悪くないのかも知れないが、全員善人の作品ばかり視聴していては多分飽きそうな気がしなくもない。
主人公のチャンは最強のレーサーとして栄光をつかんだものの血のつながらない息子の戸籍などの問題を解決するため違法レースに参加したことで逮捕され、ライセンスをはく奪された。息子とともに屋台でチャーハンを販売して生計を立てていたがレースへの出場停止が解除されたことでライセンスを再交付され復帰を目指していたところに現在のトップ選手であるリンがチャンのもとを訪れる。
リンはかつてのトップを倒し名実ともに最強のレーサーになるため勝負して欲しいと訴えるがチャンには金も車もなく――というお話。
前半はかつてのナビゲーターであるソンと一緒に廃車となったかつての愛車を入手し、修繕費などのために資金を募る番組に出場。番組スポンサーのリンの前で恥をしのんで番組中に歌ったり踊ったりして金持ちに気に入られ資金を無事ゲット。しかし愛車を修理したもののソンが事故で車を大破させ当人もケガでレースへ出場できず。そんなところにリンが自身のピットクルーや設備を貸与するとチャンを応援する。それなら最初から資金援助をリン自身がやればいいのでは......という疑問が湧くけども。
リンの支援で何とかレースに出場したチャンは周囲が事故や脱落が多発する中、優れた技術でリンをじりじりと距離を縮めていく。
レース終盤ではリンとチャンの一騎打ちの様相になり、リンのタイムを超えるべくアクセル全開でスピードを加速。コンマ数秒の差で勝利したチャンだが、ゴール地点が崖の上だったせいでガードレールを突き破り沈む夕日に向かって飛び出していく。
チャンの生死は描かれないまま、物語は突如息子を車に乗せたチャンが戦闘機とレースを繰り広げ、チャンの車が空を飛ぶシーンでエンドロールへ。
ベタと言えばベタで、一通り感動したら次の日には内容を忘れそう。ただ、好景気に沸いていた中国の作品らしく作中に出てくるそうそうたるスポーツカーの中に『頭文字D』に出てくるトレノがあったりと、一瞬の小ネタにも金をかけていることがうかがえる。作品自体は悪くないのに金のかかり方が脚本に対して異様でちぐはぐな印象を受けた。
(文/畑中雄也)