異様に薄っぺらい復讐の連鎖が続く73分『クイーンギャング 怒りのリベンジ・ライド』
- 『クイーンギャング 怒りのリベンジ・ライド(字幕版)』
- メラニー・エイトケンヘッド,ローレン・ベイツ,ティモシー・ダーラム,セリンダ・スワン,ポリアンナ・マッキントッシュ,ディエゴ・ボネータ
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映画をエンタメとして摂取している身としては本作に娯楽の要素が少なすぎて何を楽しみに視聴すればいいのか皆目分からなかった。意味深なシーンがない訳でもないため何かしらの主張はあるような気はしたが視聴者がわざわざそれをくみ取らないといけない道理もないし単純に退屈だった。
女性だけの最強バイカー集団「ダークムーン」のボスであるトリガーやその右腕のマギーに率いられ飲酒運転や喧嘩に明け暮れていた。ある日、マギーの従妹であるメアリーが大学アメフト部員3人から性被害に遭う。トリガーたちは部員たちの行きつけのバーに乗り込みボコボコにした上、彼らの尻に「私のアソコを舐めて」という焼き印を入れる。そこから互いに復讐を繰り返し――という内容。
従妹の復讐のためバーに乗り込み仲間が加害者の男をぶん殴っているのに、マギーは偶然居合わせたブライアンというアメフト部員に一目惚れし、電話番号を渡している。何をしているのかと。
この後、暴行された男たちにブライアンが痛めつけられたかと思えば、乱闘がエスカレートする過程でダークムーンに加入したメアリーが銃で撃たれたことで激高したトリガーに刺殺される。全く無関係なのに踏んだり蹴ったりどころではない。
復讐を終えダークムーンのメンバーはその場を去るが恋人であるブライアンを殺害されたマギーはダークムーンのジャケットを脱ぎ捨て街を去りエンドロールへ。
馬鹿と馬鹿の揉め事に巻き込まれたブライアンがひたすら哀れという感想しか出てこない。強いてブライアンの問題点を挙げるとすれば加害者の男たちにダークムーンのアジトを教えたことくらいだが、そもそも無関係の人間が暴力に耐えてまでダークムーンを守る義理もなし、やはり単に可哀想な人物でしかない。
73分続く薄っぺらい抗争を見せられて落胆しかないが、配信サイトなどのあらすじでは「美しく強い女バイカー集団」とか「復讐の幕が上がる!」とか、景気のいい言葉が並んでいる。主観的な問題なので言葉が正しいか否かはおくとして看板に偽りがあり過ぎないか。
せめて恰好いい女性バイカーたちが見られたら我慢もできたが上記の通り馬鹿でしかないので好感を抱くことは難しい。せっかく女バイカー集団という設定にしたのなら、もう少し憧憬を抱けるような描き方があったのではないかと思わぬでもない。
(文/畑中雄也)