愛は化学を凌駕するか。 SF版ロミオとジュリエット『ロスト・エモーション』
- 『ロスト・エモーション(字幕版)』
- ドレイク・ドレマス,リドリー・スコット,ドレイク・ドレマス,ネイサン・パーカー,ニコラス・ホルト,クリステン・スチュワート,ガイ・ピアース,ジャッキー・ウィーヴァー
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舞台は人類史上最大の世界戦争によって地球上の陸地の99.6%が破壊された近未来。撮影のロケーションとして選ばれたのは、なんと安藤忠雄による建築物。淡路夢舞台、大阪府立狭山池博物館、そして長岡造形大学などの建物を背景に、なんともうまいこと白く無機質な近未来をつくりあげている。
さて、近未来の地球上、わずかに残された生存者たちは「人類を滅ぼす最大の原因は感情なのではないか」と考えたようである。そこで生み出されたのは、平和維持のため遺伝子操作によって感情のない人間を増やしていくこと。そして彼らはコントロールと監視を張り巡らされる施設で暮らす。ところがまぁ、そんなに上手くいくものでもなく、感情が残っている人間もいるわけで。
サイラス(ニコラス・ホルト)とニア(クリステン・スチュワート)は、ともに「感情」の発症者。惹かれ合った二人は管理施設から逃れ、感情を持った人間たちが暮らしている島へ行こうと決心する。バレたら抹殺されると知りながらも脱出を図る二人の様子は、さながらSF版「ロミオとジュリエット」のよう。
人造人間の世界観らしく、さっぱりと控えめの演出。最後にどうなるかは観る側に想像させる程度で終わったのだが、タイトル通り、消えた感情(ロスト・エモーション)を自力で取り戻していこう、という希望を残してくれている。相手がどう変化しても揺るがない、科学を凌駕する愛のパワーを見せつけられる物語だった。
(文/峰典子)