トム・ハンクス監督、ひと夏の一発屋バンド物語 『すべてをあなたに』
- 『すべてをあなたに (字幕版)』
- トム・ハンクス,イーサン・エンブリー,ジョナサン・シャーチ,スティーブ・ザーン
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「バンドやろうぜ!」のノリで始まり、気づいたら全米ヒットチャートにランクイン。そんな都合のいい話があっていいのか?と思いながらも、それでいいんです!観ているうちに「わかるわかる、そういう夢見たいよね」と不思議と納得してしまうだろう映画が、トム・ハンクスの初監督作品『すべてをあなたに(That Thing You Do!)』。
舞台は1960年代のアメリカ。ちょっと冴えない若者たちが、なんとなくバンドを組んで、なんとなく名曲が生まれて、なんとなく大ヒット。メンバー同士のすれ違い、音楽に対する温度差、若気の至りでプロの世界に飲まれてしまう感じと、「バンドあるある」な小ネタが満載なのも魅力。監督であるトム・ハンクスは音楽業界側の役として登場。当時まだ無名だったリヴ・タイラーがヒロイン役で出演。『アルマゲドン』前の、フレッシュな姿を見られるのもポイントのひとつ。
中でも注目してほしいのが、劇中でひたすら流れるタイトル曲「That Thing You Do!」。気づけば口ずさむほどにキャッチー。こんな曲がたまたまできちゃうというのも映画らしい展開ではあるのだけれど、「一発屋のヒット曲って意外とこういう勢いで生まれるのかも」と、妙に説得させられるようなところもあり。ちなみに映画のために書き下ろされた一曲で、実際にシングルカットでリリースされ、そこそこ売れたとか。
人生の中でたった一度だけ訪れる(かもしれない)、爽やかで、キラキラな青年期。青年たちのはちゃめちゃな頑張りを全力で肯定してくれる映画。爽やかで、キラキラ。まるで夏休みの課題図書のような一本(誉めてます)。
(文/峰典子)