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【無観客! 誰も観ない映画祭 第43回】『ビッグフットVSゾンビ』

ビッグフット vs ゾンビ
『ビッグフット vs ゾンビ』
マーク・ポロニア,ジェームズ・カロラス,トッド・カーペンター,ボブ・デニス,スティーヴ・ディアスパッラ,ジェフ・カーケンドール,ダニエル・ドナヒュー
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『ビッグフットVSゾンビ』
2015年 アメリカ 80分
監督・脚本/マーク・ポロニア
出演/ジェームズ・カロラス、トッド・カーペンター、ジェフ・カーケンドール、ダニエル・ドナヒュー、ボブ・デニス、スティーブ・ディーアスパーラー、ほか
原題『BIGFOOT VS ZOMBIES』

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 低クオリティーなCG、無名俳優の大根演技、何の捻りもないテキトーすぎるストーリー。B級C級以下を全てスッ飛ばしてZ級映画と言わざるを得ない「ペンシルバニアのスピルバーグ」ことマーク・ポロニア監督のバカ映画。しかしタイトルに釣られてつい見てしまい、ガッカリしては別のを見て、またガッカリを繰り返すという中毒性のある作品なのです。そして昨年、何とポロニア監督作品の8枚組DVD「マーク・ポロニア フィルムBOX」が発売されました。これを奇跡と言わずして何と申しましょうか。収録作品は『フランケンジョーズ』を改題した『シャーケンシュタイン』(16年)、『ランドシャーク 丘ジョーズの逆襲』(17年)、『エイリアンVSジョーズ』(20年)、『シャーキュラ 吸血鮫』(22年)、蟹と鮫を混ぜた『KANIZAME シャークラブ』(22年)といった流行りのサメ映画5作にSF3作が追加されています。『猿の帝国 女囚戦記』(13年)と『ジュラシック・ビースト』(15年)、そして今回紹介する『ビッグフットVSゾンビ』です(単品でも発売)。あ、付録のポロニア監督アクリルスタンドは要らないです(笑)。

 ビッグフットとは、北米大陸の森林で1900年代から目撃されている、身長2~2.5メートルの獣人系UMA(未確認動物)。アメリカでは日本のツチノコに匹敵する知名度を持ち、よく映画のモチーフにもされていて、その代表作がスティーヴン・スピルバーグ総指揮『ハリーとヘンダスン一家』(87年)です。果たして「ペンシルバニアのスピルバーグ」は、本家スピルバーグを超えることができるのでしょうか(できない、できない)。

 ビッグフットは出し惜しみせず、冒頭から森を唸りながらうろついています。でもスーツがまた酷い作りで、伸ばし放題のホームレスみたいな黒髪に、表現のムズい化け物フェイス。胸と背中にある肌色の無毛部分は、筋肉の付き方が失敗したメロンパンみたいにボコボコしています。先述した『ハリーとヘンダスン一家』のビッグフットは、猿人系の特殊メイクでは右に出る者がいない特殊メイキャップ・アーチストで「ミスター・エイプ」と呼ばれたリック・ベイカーの逸品ですが、その足元にも及びません。

 そんなビッグフットが生息する森に立ち入り禁止エリアがあり、「ワイオミング郡死体農場」の看板が掛かっています。し、死体農場? そこではピート博士によって、どういう風に死体が朽ちていくのかといった人体の腐敗進行を調べる研究が行われていました。アメリカでは日本と同じように自らの意志で死後に遺体を医学の発展に役立てる献体制度は存在しますが、それとは別に遺体売買を規制する法律がないため、様々な方法で遺体を集めて流通させるボディーブローカーなる業者が存在します。だがウイルス感染者の遺体提供、遺体安置所職員による遺体横流しなど、極めて不謹慎な事件が発生しているようです。

 農場内にある研究所に、冴えない風体の学生バイトを伴い取引先の遺体運搬人がやって来て2体を「納品」します。実は博士、大病院に高値で売れる死体腐食促進剤の開発を秘密裏に進めていました。そして博士はトラック運転手を雇い、用済みになった遺体と薬剤実験の廃液を森へ不法投棄させていたのです。容器から漏れ出した廃液が地面に沁み込み、その影響で埋めた遺体がゾンビ化してしまったのです。

 やがて農場は数十人のゾンビ軍団に囲まれます。ジョージ・A・ロメロのゾンビ作品でよく見るタイプから、下顎が欠損してるゾンビ、頭蓋骨になっているゾンビ、ほか女性や子供のゾンビもいます。農場の入口ゲートに現れたゾンビは、手始めに警備員を食いますが、血飛沫は至極チャチなCGで、引き出される内臓は布切れか何かを赤く塗っただけです。

 一方、遺体運搬人コンビは車が故障して足止めを食っていました。先輩が修理道具を取りに倉庫へ行っている間、いつも出入り業者のオッサンどもにセクハラ受けてウンザリしている助手のレネが、若いバイト君に「カノジョいるの?」と目を付けます。バイト君の「女性に縁がなくて」にレネは「教えてあげようか?」。童貞バイト君にワンチャン、キタ〜! 数分後、車の荷台で初体験を済ませスッキリしているバイト君。そこへ倉庫でゾンビに噛まれた先輩が戻って来て、いきなりバイト君の頭をスパナで殴りつけ、レネに食らいつこうとします。すると意外な人物、じゃなくて怪物が助けに来ます。ビッグフットです! ビッグフットは先輩ゾンビの頭を踏みつけて潰し、レネの前に来て犬のように「ハァハァ」しながらお手をします。そうしている間にもゾンビがワラワラと農場内に入ってきて、ついにビッグフット対ゾンビ軍団のバトルロイヤル開始!

 そうこうしているうちにトラック運転手もゾンビに感染し博士もゾンビに食われ、生き残ったバイト君とレネはトラックの荷台にビッグフットを乗せて農場を脱出します。だが森にもゾンビ軍団! ここでバイト君はスコップを、レネはクワを手に特攻! 2人の大暴れでゾンビを全滅させると、ビッグフットはバイト君とハイタッチして、激戦のダメージにフラフラしながら森へ帰って行くのでした。完......と思いきや、そこへ「ついに見つけたぞ!」と現れたビッグフット・ハンターが猟銃でビッグフットを撃ってしまいます。いや、希少動物を撃ち殺しちゃ駄目でしょ。だが生死確認に近寄ったハンターは「ガア!」と逆襲され、ムシャムシャ食われてしまうのでした。そう、ビッグフットも噛まれてゾンビになっていたのです。

 などと映画の内容を面白そうに書きましたが、念のため言っておきます。冒頭の方で述べましたが、ガッカリ体験も捨てたものではありません。さあ、あなたもアルコールとツマミを用意して、ポロニア作品を観賞しながら心地よくガッカリしてみてはいかがでしょうか。

【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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