リアルな20代の恋愛と苦悩『早⼄⼥カナコの場合は』

『早乙女カナコの場合は』 3月14日(金)全国公開
今回紹介する作品は、柚木麻子による小説 『早稲女、女、男』が原作となっている。タイトルの「早稲女(ワセジョ)」は早稲田大学に通う女子大生や卒業生のことで、同書では彼女たちの特徴について「融通がきかない、男っぽい、闘志剥き出し」と説明されている。
本作の主⼈公は、そんなイメージを引き継ぐかのような生真面目で不器用な早乙女カナコ。演劇サークルで留年を繰り返しながら脚本家を志す長津田啓士との付かず離れずの関係が、もう3年続いている。内定先の出版社では、優しくて頼りがいのある先輩・吉沢洋⼀から好意を寄せられているが、今年こそ卒業するという約束を破った長津田のことも吹っ切れずにいる。果たして、人生の岐路に立たされたカナコの選ぶ道とは......?
原作で描かれていた2012年から現代の令和版に少し改変されていて、映像化する醍醐味を感じる作品となっていた。2024年12月にのん主演で劇場公開された『私にふさわしいホテル』も柚木麻子の原作ということで、作品の垣根を越えて橋本愛とのんの朝の連続テレビシリーズ『あまちゃん』コンビが久々に共演しているというまさかの嬉しいサプライズ! スクリーンで2人の姿が見られたのはとても嬉しかった。
橋本愛演じる早乙女カナコは本当にまじめな性格で自分に正直でずるいことが出来ない魅力的な女性だった。学生と社会人という見えない隔たりが恋愛における障害になっていくすごくリアルな視点が本作の魅力だ。現在学生の10代、20代には今後社会人になる時に夢と恋愛を抱えてバランスに悩んだときに観て欲しいと思った。また、社会人になってからの20代、30代は恋愛の先にある結婚を見据えて付き合うというリアルな大人の恋愛も描かれており、そこがみどころとなっているので楽しんで欲しい。それ以上の世代にも懐かしい学生時代や社会人になりたての頃の恋心を思い出させてくれる作品となっているのでおすすめできる。本作、本当に幅広い年齢の方におすすめできる作品となっていた。
最後に、本作で私がとても好感をもったのが、エンドロール! 「この俳優さんなんて名前なのだろう?」と疑問に思いながら鑑賞することはありませんか? エンドロールに文字でばーっと流れても結局わからずじまいでわざわざ検索まではしなかった経験があるのは私だけではないはず。本作は、一人一人ちゃんとご本人の映像と共に名前が表示される! これがあるようでなかなかなくて本当に嬉しかったし、監督が一人一人の映画関係者を大事にされていることが伝わってきて本当に愛を感じるエンドロールとなっていた。
全世代におすすめできる一作。ぜひ劇場でおたのしみください。
(文/杉本結)
『早乙女カナコの場合は』
3月14日(金)全国公開
監督:矢崎仁司
原作:柚木麻子『早稲女、女、男』(祥伝社文庫刊)
出演:橋本愛、中川大志、山田杏奈 ほか
配給:日活/KDDI
2024/日本映画/119分
公式サイト:https://www.saotomekanako-movie.com
予告編:https://youtu.be/m8uU5YQDa2Q
©2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会