もやもやレビュー

看板に偽りはないけども視聴後にそういうことじゃない感を強く覚える『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』

ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男(字幕版)
『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男(字幕版)』
サム・エリオット,エイダン・ターナー,ケイトリン・フィッツジェラルド,ラリー・ミラー,ロン・リヴィングストン,ロバート・クシコウスキ,ロバート・クシコウスキ
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タイトルは間違っていない。看板に偽りはないけども視聴後にそういうことじゃない感を強く覚えた。そもそも、無意味に長いタイトルをつける映画に何か期待する方が間違っている。作品のトーンはタイトルの通り馬鹿げているのにヒューマンドラマのような塩梅。B級映画らしく笑えばいいのかヒューマンドラマを見るように真顔になればいいのか判断に困る。物語の軸がヒトラーを暗殺した男がビッグフットを退治する話だし。

あらすじはタイトル通りなのだが、それでは何のことか皆目分からないと思うので説明すると本作はかつてヒトラーを暗殺した元兵士が謎の生物ビッグフット狩りに挑むアクション。主人公が愛犬とともに静かな余生を過ごしているところへ「カナダの森で謎のウイルスに感染したビッグフットを退治して欲しい」というFBI捜査官が訪れる。捜査官いわくウイルスにより森の動物は死に絶え、このままでは感染拡大を防ぐためカナダに核を落とさざるを得ないとのこと。ウイルスの抗体を持つ主人公にしか頼めないと懇願する捜査官に対し当初難色を示していた主人公は弟に説明をしてカナダへ向かう――という内容。

いきなりやってきた胡散臭い男に謎ウイルスに対して抗体があると言われて「なるほど」と視聴者は思わない。おまけに主人公が断る理由もヒトラーを暗殺したけども戦争は止まらなかったという理屈。そんな壮大な話はしていない。

何より主人公がビッグフットのもとに出向くまでヒトラー暗殺から生き別れの恋人から回想シーンが入りまくりで作品の半分くらいを占める。その中に結構ぐっとくるシーンがないではないがビッグフット退治とは水と油のように混ざり合わないためノイズにしかならない。

カナダの森に入ってからは回想シーンの丁寧さが嘘のように駆け足に進み、すぐさまビッグフットを発見し銃で撃ったり腕の骨を折られたりとバトルをして勝利。ただ主人公も負傷しビッグフットを倒したのちに力尽きる。
場面は変わって弟が兄の死を葬儀で悼んでいるところに主人公が姿を現し生還。そこからかつての恋人との回想に入りエンドロールへ。温度差が酷い。

恋人との回想シーンに妙に力が入っているゆえ、多分制作陣はこういう映画が撮りたかったのかなぁと想像してしまう。別々の映画を無理やりくっつけたような違和感を覚える。
しかし、それは視聴者に関係のない話なので、もう少し回想とビッグフットを結びつけるような展開にはできなかったのか。どちらか一方に振り切ればそれはそれで面白いものになったと思わぬでもない。

(文/畑中雄也)

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