もやもやレビュー

謎のテキサス推しにひたすら困惑『アルマゲドン・アメリカ』

アルマゲドン・アメリカ [DVD]
『アルマゲドン・アメリカ [DVD]』
マイク・ノリス,ディナ・メイヤー,インディア・アイズリー,マーシャル・R・ティーグ,ダイアン・ラッド,マイク・ノリス
Happinet
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

酷い某大作映画のパクリのようなタイトルで既に駄作のニオイがプンプンしていた。「きっと視聴すると心底後悔するのだろうなぁ」と再生したら果たして酷かった。某大作映画の舞台は宇宙だが、こちらはテキサス州。規模感のショボさが半端ない。いや日本の倍近く広いのだけどテキサス州。

映画のサイトや配信サイトによると、本作のあらすじはアメリカ合衆国の中枢システムが巨大テロ組織の攻撃により機能不全に。略奪などが起き社会が混乱する中で軍人らが武装し祖国を守るため戦いに身を投じていく――という内容。

「俺はそんな映画を見ていない!」と叫びたくなるほど中身が違う。巨大テロ組織は国連だし、対抗する武装組織はテキサス州在住のお爺ちゃんとかだし。ミスリードというより虚偽ではないか?とすら言いたくなる。それかあらすじを執筆した人間は映画を見ていないか。あと、あらすじの1行目にたどり着くまで上映時間の3分の1もかかるという冗長さも辛い。

視聴した内容をもとに正しくあらすじをまとめると、アメリカ大統領や政府高官が国連にアメリカを明け渡す密約をして、それを知った主人公が阻止すべくテキサス州で戦うというお話。

荒唐無稽さにお口がアングリと開いたところで国連軍(中国とロシア)が電磁パルスを全米に照射させ電子機器を破壊する。主人公は密約の証拠を無線でアメリカ全土に放送したところ、中国やロシアの軍隊が米軍とともに強襲し地元の警官や農夫らが一戦を交えるシーンに。ちなみに主人公らが立てこもる場所は自宅という雑さ。空中から爆弾を落としたら終わるのではないか?という疑問をぐっと飲み込む。画面では主人公らが景気づけに密造酒を飲んでいる。必要なのだろうか、そのシーンは?

仮にも現代の軍隊の武器と一般市民の武装では戦いにならないはずなのに互角の戦いを繰り広げている。主人公らはテキサス魂とか何とか言っているが、外国人には全く理解できない。

戦闘が膠着状態に陥ったところに国連軍の武装ヘリが襲来し、主人公らも農薬散布用のヘリと思しきボロいもので対抗。主人公が武装ヘリの上部から火炎瓶を投下しヘリも地上の敵も撃退させるという荒業を繰り広げる。火炎瓶の原料は何だろう?と思わずにはいられない。

終盤は傀儡政府に従わないと宣言をしてテキサス州の独立を宣言。「俺たちの戦いはこれからだ!」的な終わり方をしてエンドロールが流れてきた。

一州の武装した市民が全米を制圧するよりはリアリティがあるけども中途半端すぎて90分の間何を見せられていたのだろう?という疑問と微妙な戦闘シーンで心身を疲弊させられやっと終わってくれたという安堵がない交ぜになった感情に襲われる。

視聴後、監督を調べたらチャック・ノリスの息子であるマイク・ノリスという人物だった。謎のテキサス推しに納得した一方、「チャック・ノリスの息子ならもっとアクションシーンを頑張れよ!」という思いしか出てこない。ちなみに本作の原題は『AMERIGEDON』という、邦題よりもさらに酷いタイトルで日本の配給会社は比較的頑張ったのだなという無駄な敬意しか出てこない。

(文/畑中雄也)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム