もやもやレビュー

驚きのご都合主義で観るものを唖然とさせる『ポンペイ2014』

ポンペイ2014 [DVD]
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災害映画の醍醐味と言えば何はなくとも絶望的な大災害の描写だと思うのだが、本作はB級映画のため驚きのショボいCGで観るものを唖然とさせる。また、大災害に立ち向かう人々の勇気や行動力に心を打たれるのも災害映画の楽しさであるが、本作はB級映画のため驚きのご都合主義で観るものを唖然とさせる。大事なことなので2回言いました。パソコンなりテレビなりを破壊する危険と隣り合わせで視聴するという意味では手に汗握る緊張感があったと言えなくもない。

本作にあらすじと呼べるほどのものは存在しないのだが、仕事で家族とナポリを訪れていた元軍人で主人公のジェフはポンペイに観光へ出かけた妻のリンと娘のミカエラが火山の噴火に巻き込まれたことを知る。ジェフは軍のヘリを盗み家族の元へ向かう――という内容。

ジェフが救出に現れるのは終盤なので、作品の中心はリンとミカエラの2人なのだが何故かミカエラに火山の知識があるという設定が出てきたり途中で土石流に襲われても建物に逃げ込み間一髪となったり。火山の知識はともかく、土石流は建物に入って防げるものではないと思う。

難を逃れたと思ったら今度は火山性ガスが発生し、中毒症状に苦しむ避難者たち。ミカエラは何故かガスの影響を受けず、重曹で濡らした布を口元に巻いてふさぐよう指示を出す。濡れた布で口や鼻をふさいだら呼吸ができなくなると思うのだけど。拷問かな?

噴火が本格化して溶岩が流れ出したところでヘリに乗ったジェフが救出に訪れるのだが火山弾がヘリに直撃。何故かジェフたちは溶岩を避けて建物の上や下をウロウロし始める。ジェフは一体何をしに来たのだろう?

火砕流まで発生して今度こそ絶体絶命となったところに救助のヘリが訪れて無事救出されてエンドロールへ。CGのヘリが着陸場所を若干間違えているのは全編酷すぎて気にもならない。

元軍人という設定が生きたのは軍のヘリを盗む場面だけで、何の役にも立っていない。妻のリンに至っては何で登場させたの?と思うほど何もしていない。もっとも、アサイラム制作の作品なのでしょぼかったりつまらなかったりすることに怒るのは野暮なのだけど。

アサイラムなので同年に公開された大作映画があるはずと思い調べてみたら『ポンペイ』が上映されていた。こちらは剣闘士の物語であり本作と内容がかすりもしない。
それでも口コミサイトを眺めてみると本作と『ポンペイ』を間違えて書き込みしていると思しき投稿があった。妙に評価が高かったのはこういう誤解のためだろう。

(文/畑中雄也)

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