スターを目指す少女が殺人鬼になるまで『Pearl パール』

　1979年を舞台に、ポルノ映画制作者たちが年老いた殺人鬼に襲われる映画『X エックス』。斬新なアイディアですぐさま「夏の話題の一本」となった本作は、3部作になることが発表されており、前日譚の『Pearl パール』は2022年に公開され、新作『MaXXXine（原題）』は今年7月に米公開となりました（日本公開は未定）。今回ご紹介するのは、すべての始まりを描く『Pearl パール』。1918年、スペイン風邪が流行している時期が舞台になっており、美しい女の子パールがどんどんと狂っていく様子を描いていきます。

　映画スターになることを夢見るパールは、厳格な母親と体が不自由な父親と３人で暮らし、戦地に行ってしまった夫の帰りを待ちながら、実家の農場を手伝っていました。そんな彼女は、こっそり家を抜け出し、地元の映画館に向かい夢に浸ったり、案山子とダンスをしたりして、どんどん妄想が膨れ上がります。ある日、パールは夫の妹からオーディションの話を耳にします。彼女は、オーディションに合格して田舎町から離れることで頭がいっぱいになりますが、母親とは喧嘩に発展。感情的になったパールは、母親とつかみ合いになり、そこで母のスカートに火が付いてしまい......。

　どんどんとパールの妄想の世界を覗いていく感覚になる本作。彼女の性的妄想と殺人に対する欲望に、鳥肌が止まりません。例えば、笑顔で手を振り戦地から帰ってきた夫をイメージした時には、パールは夫が爆発する妄想をします。果たしてパールが夫と再会する頃にはどうなっているのでしょうか......。エンドロールはかなり強烈。主演のミア・ゴスの演技力に圧倒されること間違いなし。

（文／トキエス）