猟奇的殺人事件を幇助させられた青年目線で描く『スノータウン』
- 『スノータウン(字幕版)』
- ジャスティン・カーゼル,ショーン・グラント,ルーカス・ピッタウェイ,ダニエル・ヘンシュオール,ルイーズ・ハリス,アンソニー・グローヴス
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2011年カンヌ国際映画祭批評家週間で特別審査員賞を受賞したオーストラリアの作品『スノータウン』。本作は、1990年代に発生した「スノータウン男女12人猟奇殺人事件」を題材に、殺人に加担させられてしまう青年の視点で描いています。同事件が明らかとなったのは1999年。スノータウンの銀行跡地で、多くの遺体が発見されたことでした。本作では、事件が実際に明らかになる場面などは一切描かれておらず、どのように殺人が行われていたのかという人間の狂気と惨さにフォーカスが当たっています。これが現実で起きたのかと思うとゾッとする&途轍もなく重たい作品なので、気分が落ちている時に見られない一本。
舞台はオーストラリア南部の田舎町スノータウン。ここに住む内気な少年ジェイミーは弟たちとともに、隣人から性的虐待を受けてしまいます。シングルマザーの母親はその事実を知り警察に通報。そんな中、母親に新しい恋人ジョンができ、優しい笑顔でカリスマ性のあるジョンに子どもたちは惹きつけられていきます。ある日、アイスクリームを使って、隣人の家に「変態」と子どもたちに落書きをさせるジョン。彼の嫌がらせは止まらず、ついに隣人は引っ越していきました。またこの小さな町のコミュニティではジョンを筆頭に、「小児愛者などを撲滅すべき」という会議が定期的に開かれます。ジョンは、コミュニティに活力をもたらす存在ですが、ジェイミーはあるとき、同性愛嫌悪で殺人鬼のジョンの顔を見てしまい......。
ジェイミーの母親は泣いているシーンが多く、鬱屈しています。そんな彼女に優しく接し、子どもたちにちゃんとした食事を提供するジョン。ジェイミーが「模範となる存在」に出会えたとことを表す、唯一明るいシーンです。しかし、その後からジェイミーは地獄を見ることに。ジョンから犬を至近距離から銃で撃つことを強いられるなど、これまでにはなかった経験を重ねていきます。さらには、腹違いの兄の殺人を無理やり見せつけられてしまい......。ジェイミーがどのようにして殺人幇助をしてしまうのか、どうして逃げ出したり警察に通報したりしなかったのか。ジョンの人を操る能力にただただ驚愕してしまう。そんな一本でした。
ちなみに、ジェイミーを演じたのは本作がデビューとなったルーカス・ピッタウェイ。監督ジャスティン・カーゼルは、撮影時に、ジェイミーとしての感情を引き出すために、撮影現場ではあまり他の俳優たちと話さないように指示したのだとか。ジェイミーの孤独感を観客が感じられたのも、このアドバイスのおかげなのかもしれません。
(文/トキエス)